第16回 『夜は暗くてはいけないか』

 

乾 正雄 著/朝日新聞出版 刊

 

 

 

日本の都市は明るくなり過ぎたのではないか? と著者は言います。夜の街のにぎやかな照明。時に過剰なライトアップ。車社会がもたらしたのは、車が発する光のみならず、高速道路や主要道路を照らし出す車のための照明・・・。

夜は暗くなくてはいけないか、と問われれば、誰しも一瞬動揺するかもしれません。確かに、都会の夜は愉しくて便利です。一方で、現代人が失った大事なものは何でしょう。暗い夜の蛍。見上げる星空の美しさ。今、日本人が昔のように星空を堪能するには、明治維新の頃の暗さにまで戻さなければならないのだとか。

本書は、「明るさ/暗さ」は人間にどう影響するのか考える、「暗さ」の文化論。気候がもたらす「暗さ」、欧米や日本の優れた「暗い」芸術作品や建築物、ビルと照明の歴史、人間の眼の働きなど、さまざまな視点から「暗さ」を取り上げます。

均一照明と不均一照明のどちらが望まれるか? というくだりがあります。どんなことをするかを当てはめていくと、見えてくるものがあるようです。

<均一照明>
 ・オフィスで事務作業
 ・居間で勉強
 ・居間で新聞を読んでくつろぐ

<不均一照明>
 ・オフィスで考え事
 ・オフィスで休憩
 ・居間でパーティー
 ・居間で音楽を聞く
 ・居間で客をもてなす

どう住まうか?から、家の照明を考えることは、欧米に比べ、明る過ぎると言われることの多い日本の住宅を見つめ直すきっかけになりそうです。「暗さは人にものを考えさせるのだ」著者のことばが印象に残る一冊です。

 

選書・文  スロウな本屋 小倉みゆき

 

 

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スロウな本屋

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