このシリーズでは、建築家さんご自身の日ごろの暮らし方や
プライベートな関心事といったお話を通じて、その人となりを探ります。

シリーズ第6回目に登場してくださるのは、株式会社 FOMES design・代表の髙見修一さん。
髙見さんは環境に優しいOMソーラーハウスや、建築家と二人三脚で家づくりを考えるプロジェクトなど、家族みんなが笑顔になる家づくりの提案を続けていらっしゃいます。
凛とした冷たい空気に包まれた日、髙見さんのご自邸アトリエを訪ね、お話を伺いました。

1.デザインの3つの意味 ~気になる建築家の横顔 第6回~

2016.03.07

 

 

  • はじめまして。きょうはどうぞよろしくお願いします。

はじめまして。FOMES design(フォームス・デザイン)といいます。
…突然ですが、社名について説明してもいいでしょうか? 誰も聞いてくれないので(笑)。

  • ぜひ、教えてください!

 

個人の建築家が主宰する設計事務所のうち、作家性を強く反映した設計を手がけるアトリエ系事務所は個人名を出しているところが多いんです。
この「FOMES design」も、実は「髙見修一住宅デザイン事務所」なんですよ。

  • ん?

書いた方が分かりやすいですかね。これと、これで…。
実は「髙見修一のつくる家たちのデザイン事務所」なんです。「TAKAMI HOMES DESIGN」

  • 髙見さんの「T」とホームの「H」が組み合わさって「F」。

 

本来なら「フォームズ・デザイン」になるんですけど、濁点の「ズ」が言いにくいので、濁点をとって「フォームス・デザイン」にしました。

  • なるほど。実は個人名が含まれていたんですね。

はい。なんとなく漢字で名前を入れるのが恥ずかしくて(笑)。それと、仕事をチームでやりたかったという想いが大きかったですね。個人名が出ると「先生」と呼ばれることが多いじゃないですか。これだったら、私の名前が前に出てこないので事務所で動いているというイメージで…。

あ、そうだったの!っていう顔をスタッフがしていますね(笑)。

 

(スタッフ)知ってましたよ!

  • おや?棚の向こうから声が聞こえてきました(笑)。

 

スタッフには言っていましたね(笑)。そういう事務所です。よろしくお願いします。

  • 社名には「建築」「設計」ではなく「デザイン」という言葉が入っていますね。

はい、「デザイン」という言葉には思い入れがあり、ぜひ入れたかったんです。私はもともとデザイン学校あがりなもので、建築という言葉にちょっと距離感があったんですね。

  • はじめは建築家ではなく、デザイナー志望だったんですか?

昔からものづくりが好きで、近所の床屋さんが飼っていた犬の小屋をつくったらえらく褒められて、小学校時代は大工か指物師になるのが夢だったんです。高校時代はバンド活動に明け暮れていたものの(笑)、知らない間に応募されていた製図コンテストで賞をもらったこともありました。デザイン専門学校に進み、当時はインテリアデザイナーを目指していたんですよ。その時に習った製図の先生の言葉が忘れられませんでした。「デザインという言葉の意味を知っているか?」と。ほとんどの方が「デザイン」というとスタイルのことを指していると思っています。

  • そうですね。デザインは見た目というイメージがあります。

それもあるんですが、それだけじゃありません。当時、先生は「デザインには3つの意味が込められている」と言われました。まず1つ目は私の仕事でいうと設計でしょうか。設計では、いわゆる動線などプランニングの問題他、頑丈な造りで『使い勝手が良いこと』。構造や機能に関することです。2つ目がしいていうならスタイル、見た目です。『恰好いいこと』。美しさ。あともう一つ、いいデザインに含めたい3つ目の要素があるんです。何だと思いますか?

  • 使い勝手が良くて、恰好良くて…。もう一つですね。何でしょう…?

商業ベースの話になるんですけど、的確な値段で、『売れること』です。どんなにステキなモノでも、一般消費者に手が出せないものは「いいデザイン」とは言えないんです。

  • 初めて知りました!デザインにはそういった意味合いも含まれているんですね。

だから、デザインという言葉は使ってもいいんだけど、「いいデザイン」という言葉は軽はずみには使えないなと思いました。それがずっと忘れられなくて、デザイン事務所という社名にしたかったんですね。

  • 「いいデザインの家をつくりたい」という想いが込められているんですね。

「いいデザイン」の3つ目の要素『売れること』。
私は状況に応じていろんな言葉に置き換えれると思っているのですが、コップ(商品)で考えると『売れること』、店舗で考えると『繁盛すること』。
それを住宅に置き換えると『居心地がいいこと』といったところでしょうか。クライアントの住み心地、快適であるという満足感。買い求めやすい、快適な家ってことかな。

  • でも、それって相手によって違ってきますよね。

もちろん。だからクライアントのご要望を、伝えきれてない部分も丁寧に聞き取り、理解し、それ以上のカタチにして返すことを心掛けています。だから、同じ家は一つとしてできないんですね。その規格がどこの地形でも当てはまることはない。ロケーションもクライアントのご要望も違いますからね。そこが、ハウスメーカーさんとの違いでしょうか。

 

そういえば、昨年末に家の近くでクラシックコンサートがあったんですよ。そのとき、デザインのことを教えて下さった先生が事務所に立ち寄ってくださったんです。久しぶりにお会いしましたが、お元気そうでした。

  • 教え子の活躍を楽しみにしてらっしゃるでしょうね。それにしても、インテリアデザイナーを目指していた髙見さんが、建築の世界へ入ったのはどういった経緯が?

当時、インテリアプロダクト科で学んでいました。プロダクトは生産品のことですね。おしゃれな店舗の設計をしたかったんです。

  • キラキラしたかっこいいイメージですね。

それが、卒業近くにもう一人の非常勤講師の先生から将来のことを尋ねられたんですよ。「インテリアの仕事がしたいんです」と伝えたら、先生から「インテリアの仕事をするならハコ(建築)の造り方を知っている方が面白いぞ」と言われたんですね。

  • ほぉ。

確かに店舗ってビルの一室に入るテナントの仕事が多いんですよ。テナントの仕事は天井の高さも決まっているし、それよりもハコから造れば高い天井も造れるし…なるほどなぁと思って、建築事務所へ行ってみることにしました。そこで、「じゃあ、手始めにうちに来てみるか」と、その先生が誘ってくださったんです。それが後の私の師匠になる方なんですけれどもね。

 

  • デザインの奥深さを知り、先生の一言で「建築の道」へ足を踏み入れることになった髙見さん。ただ、当時は建築の知識もなく、図面を描いたこともなかったそうです。どんな修行が待ち受けていたのでしょうか。次回は修業時代のお話です。お楽しみに。

つづく・・・4回連載 次回「2. HOME(ホーム)に触れる」は3月14日UP予定です。

2016年1月 取材
文:松田祥子

2. HOME(ホーム)に触れる →

 

株式会社 FOMES design

岡山県倉敷市本町9-18 Tel.086-423-5488
http://www.fomes.net