1.自らが設計した「西七区の家」

「西七区の家」へ

ART BOX 建築工房の一級建築士、野田 大策さんが自ら設計したご自宅、「西七区の家」に伺ったのは、5月半ばのことでした。こちらは、公益社団法人 日本建築家協会の「第10回JIA中国建築大賞2018」住宅部門大賞を受賞されたお宅で、現在は、野田さんと奥さま、小学1年の男の子、もうすぐ4歳の女の子と4人で暮らしています。1階南側のリビングは、ガラス戸を収納するとウッドデッキと一体化し、さらに、目線の先にある黄金色の麦畑と一体化したような錯覚を覚えます。

ARTBOX建築工房一級建築士事務所
野田 大策さん

 

2019.08.19

 


 

野田大策さんが設計したご自宅、「西七区の家」。引き戸をすべて収納すると、外の世界と一体化するようなリビングがあり、何よりも自由さを感じる空間です。設計段階では、「幅2間(3.64m)の家にしよう」という条件を設けたそうです。

 

黄金に輝く麦畑の中にある
ご自宅、「西七区の家」。

 

― 南側のリビングのガラス戸を開け放つと、風が家の中を吹き抜けるんですね。

そうなんです。うちの妻は、周囲の自然に感動することがあるようで、麦畑を風が通ると、「風が見える!」みたいなことを言うんです。
でも僕は小さい頃から、ここにいるので、「ふうん」という感じで(笑)。


― ご自宅にお伺いする途中の風景も、幅の広い用水路に覆いかぶさるように大きな木があったり、(ヤギがいたり、)ダイナミックだと思いました。
野田さんが幼い頃は、どんなふうだったんでしょうか。

この周辺は市街化調整区域なので、家の前の道路が少し変わったくらいで、ほとんど変わらないです。
この麦畑も昔からあって、ここは2毛作なんです。この麦がもうすぐ刈られて、6月には水が入って、田植えです。だからこの家、虫は多いですよ。
そうだ、夏の夜には「水田に家が映って、こんなふうになるよ」って息子が教えてくれました。

― こちらは、ご自宅と事務所として使われているんですか。

自宅として使いながら、仕事の打ち合わせも出来るように、と思って、造りました。
展示場としての要素も兼ねているので、天井の高さも2.1mを基本に、エリアによって変えています。
(床レベルを一段落としている)キッチンに立てば、天井高でよく使われる2.4mになるんです。
見ていただきながら、「これくらいでどうですか?」という話が出来るようにしています。

 

自らに課した設計の条件は、
「幅2間(3.64m)の家にしよう」。

 

― この住宅のスタート地点を教えてください。

ここは実家の田んぼだった場所で、もともと干拓地なので、最初に11mくらいの杭を打ちました。
自由に造成することは可能でしたが、正方形に造成すると、田んぼがいびつな形になる。
それを避けるために、紆余曲折ありましたが、細長く造成して、細長く建てようと決めました。

― まったく自由に設計できたんですか?

条件がないので、自分で、「幅2間(3.64m)の家にしよう」と決めたんです。
建築家って、条件が厳しければ厳しいほどモチベーションが上がる、っていうのはあると思うんです(笑)。
条件や要望を、「こういうかたちで、解決しました」と言うことが出来れば、うれしいですから。

― やはり印象的なのは、麦畑に向かって広がるように開放されたリビングです。こちらは、最初に決まったんですか。

リビングの位置は最初、道路側にしていたんです。
でも、南からは常山が見えるんです。だからやっぱり、と、常山が見える位置にしました。

― ガラス戸と網戸がすべて収納されると、外とまったくフラットに繋がるんですね。建築的には、どういうところが難しいのでしょうか。

角の柱をなくすことと、レール部分ですね。
通常は鴨居を入れるところで、上部と床に溝が入りますが、そういった分け目を設けず、中と外の天井が全部、続いています。
作業的には、大工さんから、「逃げがない」ってすごく言われました。
寸法が決まっているので、木材をちょっとでも削りすぎると、もう無駄になってしまう。
少しずつ削って、合わせてみる、という作業を何度も繰り返してもらいました。


つづく・・・4回連載 次回「2.完成から2年。味わい深い変化も 」は8月26日UP予定です。

2019年5月 取材
文:尾原千明

2.完成から2年。味わい深い変化も →

 

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