2.さまざまな「居場所」のかたち

平野建築設計室
平野毅さん

 

2015.09.14

 

 

― 「倉敷建築工房 大角雄三設計室」で15年間の実務を経て、2011年9月に独立。
事務所は倉敷に開設されましたね。倉敷という地のメリットというと?

そうですね。美観地区が近いのでぷらっと出来るし(笑)、イベントをするには便利なところだと思います。
あと最近になってですけど、建築家の方が周りにいらっしゃるので、交流を楽しんでいます。

― 今年4月からは新しいスタッフも入ったとお聞きしましたが。

はい、難波君です。

― 難波さんから見て、平野さんはどんな方ですか?

難波:おもしろい方ですね。何にでも挑戦する姿勢がすごいなと思います。

― 挑戦する姿…。例えばどんなところでしょう?

難波:そうですね。建築の他にアート活動の手伝いをしたり…。
昨年10月に倉敷で行われたんですが、新聞紙で作られたドレスで街中を歩くというアートイベントの手伝いをされていました。

happy unbirthday (hUb)のパフォーマンスですね。
誰もが手にすることのできる新聞という素材を使って手作りされたドレスで町を行き交うパフォーマンス。
みんなはじめはビックリしていましたが、写真を撮ったり、あとを付いていったり、観光客も地元の人も子どもも大人も楽しんでいました。
そこにいた人たちにとって、その空間は忘れられない特別なものになったと思います。

― おもしろそうなイベントですね!

これは僕の持論なんですが、建築といっても家をつくったり、建物をつくったりということが全てではないと思うんです。
空間論的な話にもなるんですけど、歩いている人、通勤している人の空間をつくる。
いろんな環境をつくる。建築を通していろんなことができる、そのことが楽しくて。

― おぉ、視野が広がっていきますね。

家もね、今は木や鉄という材質で殻を作って家と呼んでいますが、もっと違う形態の家が出てくるかもしれない。
野原の中に布(テント)を張ってそれを家と呼ぶ人もいるかもしれないし、キャンピングカーで旅をすれば車が家になるし、これから空に浮かんでいるような家も…

― わぁ、家のイメージが広がって、自由な感じがしてきました。

家の持ち方って人さまざまなので、もっと自由に考えていいのかなと思います。

― なるほど、自分がどう過ごしたいか? ってところですものね。

そうそう。
自分の居場所ってさまざまなかたちがあるからこそ、おもしろいんだと思うんです。

― だから、アート活動の手伝いも、実は建築とつながっていると…。

はい。

難波:そんな平野さんの姿を近くで見れることが、とても刺激的で勉強になります。

― きびしい上司ですか?

難波:いえ、のびのびとやらせてもらっています。注文はあると思うんですけど、まずは何でも自分でやらせてくれますね。失敗してもいいからやってみよう、と。

これは、師匠(大角雄三さん)から学んだことなんです。
いろんな経験が肥やしになるから、どんどん経験を積めばいい、と。
僕は入ってから1年目に「海外に行ってみたら?」と言われました(笑)。

― おぉ!

同じところで実務を学ぶことも大事だけど、いろんな経験をして自分自身を磨いていくと、自分のつくりたい建築みたいなものが出来上がっていくので、そういう経験をした方がいい。
だからか、僕はみんなからは落ち着きがなさすぎる、というくらいあちこち行っています(笑)。
例え半日時間ができたとしても、コンペをしているような気がするし…。

― あぁ、どこまでも設計をしたい(笑)

これも師匠の教えなんですけど、「忙しいときに忙しいことをせんと意味がない」。
暇だからコンペをするというのは普通で、実務で忙しいときに考えることをしなさいと。
「24時間建築漬けという時間を1年でも2年でも続けなさい」と言われました。

― すごい教えですね。

それってね、若いときにしかできないんです。
年をとったら集中力も切れるし、自分のやりたいことも固まってきてしまうから。
自分でやってみて実感しました。だから、若い人にも伝えていきたいです。

― 平野さんが家づくりで普段から心掛けていることは?

建築家はオーケストラの指揮者に例えられることがあるんですが、僕は指揮者だけの役割ではないと思っています。
指揮者は音楽をつくって観客に感動を与えるんですけど、僕らはもっと離れた場所にいて、すべてを統括するプロデューサー的な役割を果たすことも大切なのではないかと。

― 舞台の上だけの仕事じゃないということですか?

指揮者というのはいい音楽をつくることに一生懸命になる。
建築家もそこは大前提なんですが、音楽をつくることだけじゃなくて、会場のお客さんの入りだったり、どこで営業した方がいいのか、どこでイベントをした方がいいのか、かと思えば、その吹き方はちょっとおかしいんじゃないと職人のようにこまかいところまで一緒に作ったり…。
近くなったり、遠くなったりを繰り返し、全体を見ながらつくりあげていく。

― 俯瞰する視点、全体のバランスが大事ということでしょうか。

そうですね。
実際に家を建てていて気づくんですが、このバランスがとても大切なんですよ。
建築家だけが家を建てるんじゃなくて、基本的には施主様が想いやお金を出し、工務店・職人さんが技術を出し、僕たちがアイデアを出し…、イメージとしてはそれら3つを団子のように練り混ぜて、家という新しい形をつくりあげていく。
持ちつ持たれつ、みんながカバーし合って、家を建てていくんですね。
そのプロセスを大事にしたいと考えています。

― 建築につながるアート活動、さまざまな形態の家、プロデューサー的視点…
建築という枠にとどまらない自由でやわらかな発想に触れ、気がつけば平野さんワールドにどんどん引き込まれていました。

つづく・・・4回連載 次回「3. 二度見したくなる家」は9月21日UP予定です。

2015年6月 取材
文:松田祥子

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平野建築設計室

岡山県倉敷市阿知3-21-26-202 Tel.086-441-8972
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