このシリーズでは、建築家さんご自身の日ごろの暮らし方や
プライベートな関心事といったお話を通じて、その人となりを探ります。

シリーズ第6回目に登場してくださるのは、株式会社 FOMES design・代表の髙見修一さん。
髙見さんは環境に優しいOMソーラーハウスや、建築家と二人三脚で家づくりを考えるプロジェクトなど、家族みんなが笑顔になる家づくりの提案を続けていらっしゃいます。
凛とした冷たい空気に包まれた日、髙見さんのご自邸アトリエを訪ね、お話を伺いました。

2.HOME(ホーム)に触れる ~気になる建築家の横顔 第6回~

2016.03.14

 

 

  • 「インテリアはハコ(建築)の造り方を知っている方がより面白いぞ」と、衝撃の言葉を放った先生の元で建築の道を歩み始めた髙見さん。当時はどんな様子だったのでしょうか。

その先生(師匠)の元では2年半お世話になりました。私が一番弟子として入ったんです。当時はバブル期で仕事量も多かったですし、スタッフは1人しかいませんでしたから、朝ごはん以外ほとんど一緒。夜遅くまで事務所にいましたね。なにしろ仕事ができなかったんで(笑)。入った当初は図面も描いたことがなかったし…。

 

  • ゼロからのスタートですよね。基礎的なことは教えてもらいながらですか?

教えてはもらえなかったです。最初に質問したら、師匠は本棚にある本を指差して「本が何百冊あると思う?その本を読んで、まずは自分で勉強しろよ」と。師匠を現場に車で送っていき、帰ってきては仕事をして、夜は勉強をして。今みたいにインターネットで情報がすぐ出てくるという時代ではなかったですからね、頼れるのは本のみ。はじめの1年はあっという間でした。2年目に入ると県外の仕事が増えました。

  • 県外に出張ですか?

2年目に入ると図面は一通り描いていましたから、自分の現場は自分で観てこい!と放り出されるんです(笑)。当時、専門学校内にある今で言うカフェの設計を任されました。最初が京都、次が金沢、東京は南青山だったかな。

 

  • おしゃれな街ばかり。店舗設計は髙見さんが昔からしたかったことですね。

楽しくさせてもらっていましたよ。ただ、現場では、職人さんに聞かれても分からないときがあるんですよ。そのほかにも困った経験はいろいろありましたが、当時必死で対応したこと、調べたこと。そのすべては自分の力になったと思います。

  • その後はまた別の事務所へ?

独立するまでにあと2つの事務所にお世話になったんですが、実は師匠の事務所を辞めたのは、アメリカに住んでいたバンド仲間から「一度、USAに来ないか」と誘われたことがきっかけだったんです。そのとき、「それもありだな」と思って、「師匠、辞めます」と伝えました(笑)。

  • あら(笑)。師匠から学べることは十分学べた、と。

うーん、今から思えば全然十分じゃないんですが、自分の中では後悔したくないという想いが強かったかな。1週間の海外旅行って誰でもできると思うんですが、さすがに2ヶ月、3ヶ月となると実現するのが難しそうで、行くなら結婚をしていない今かなと思ったんですね。事情を師匠に説明すると、悪い話じゃない、若いうちにやっておけ、と言ってくださって。

 

  • 2ヶ月のアメリカはどうでしたか?

もう衝撃的でした。最初の1ヶ月はボストンに住む友人のアパートで過ごしました。何も知らずアメリカに行ったので、その友人から、宿の取り方、ごはんの食べ方、最低限のことをいろいろ教わりました。あとの1ヶ月は、日本からもう一人の友人が追い掛けてきたので、ウィークリーホテルを借りながらニューヨーク、ロサンゼルス、サンフランシスコへ、最後はハワイに飛んでのんびり過ごして帰りました。

  • 一番印象に残っていることは?

ボストン1ヶ月の間に、友人が友達の家へ連れまわしてくれたんです。友達のホームを見させたかったんでしょうね。都会のアパートだったり、バージニア州を車でずっと走った先の草原の中にあるトレーラーハウスだったり、フィラルディアフィアだったかな。牧場主の一家を訪ねてキャンプをしたり。そこではみんながゲストに対してもてなしてくれるんです。外食と全然違って、ホームで食べた料理がおいしいの、なんのって(笑)。

 

  • なかなか経験できないことですね。

こんな暮らしがあるんだ!と。世界は広いな。いろいろなホームがあるなぁと思いました。トレーラー、マンション、牧場主の家。置かれている環境によって家のカタチはいろいろあるわけで、暮らしに対する視野が広がったことは事実ですね。2ヶ月間でしたが、刺激を受けた贅沢な時間でしたね。お金はなかったですけど(笑)。

帰国してから次の就職が決まるまでは、引き続き半年間ほど師匠のところでお世話になりました。次の就職先に関しては、アドバイスをくれるもう一人の先生がいるんです。

  • 卒業しても気に掛けてくださる先生方がいて、本当に恵まれた環境だったんですね。

実は、学生時代にインテリアデザイナーともう一つなりたい仕事があったんですよ。完成予想図を描くパース描き。そのパースを習った先生です。その先生には「お前は絵描きより設計の方が向いているから、この仕事はするな」と言われました。

  • 髙見さんの道は、建築へとつながっていたのかもしれませんね。

これは軽井沢につくった家なんですけど、どうしても秋の絵が欲しいとお願いしてその先生に描いてもらった原画です。今はコンピューターで制作できますけど、当時は手で描くのが当たり前の世界でした。

 

  • すごくリアル。影もちゃんと入っていますね。秋の気配を感じます。

2001年から2002年にかけて1年半軽井沢に通ったんですよ。新幹線のときもあれば、車で700㌔を走ったこともあります。そのときは頭の中が軽井沢モードになってましたね(笑)。私の好きな建築家アントニン・レーモンド氏や吉村順三氏が建てた物件が軽井沢界隈に建っているんですけど、仕事を終わらせて、いろいろと見て回っていました。今でこそインターネットがありますが、当時は雑誌や本を頼りに。

  • すぐ探せるものなんですか?

個人宅なので、詳しい所在地までは書いてないわけです。でも、ところどころ記載があるんです。「○○橋を渡り、右手を見ると森が見えてくる。その中にこの家はある」と。その橋の名前を頼りに近くを探してみたり、教会などは名前が出てますから、しっかり中も見学したりして。

 

  • 写真と実物ではやっぱり違いますか?

感じ方が全く違いますね。思ったより狭かったり、とか、実際のプロポーションに感動したり、そういったものを目の当たりにできるというのは贅沢な時間でした。大きな窓が何枚もあいて外と一体になるオープンカフェの気持ちよさも軽井沢で初めて実感しましたね。こんなに食事が気持ちいいものなんだ、と。

  • 独立して23年。さまざまなHOMEを前に体感した心地よさ、感動、驚きなどがFOMES designの家づくりの根底にあることが伝わってきました。

つづく・・・4回連載 次回「3.街暮らしを楽しむ」は3月21日UP予定です。

2016年1月 取材
文:松田祥子

← 1.デザインの3つの意味

3.街暮らしを楽しむ →

 

株式会社 FOMES design

岡山県倉敷市本町9-18 Tel.086-423-5488
http://www.fomes.net