このシリーズでは、建築家さんご自身の日ごろの暮らし方や
プライベートな関心事といったお話を通じて、その人となりを探ります。

シリーズ第2回目に登場してくださるのは、佐渡基宏建築アトリエ・代表の佐渡基宏さんです。
その建築は、微かな陰影を大切に感じられる、静謐な佇まい。
施主との誠実な対話から、それぞれの暮らしに沿う住まいのかたちを生み出しています。

秋の雨がしっとりと芝を濡らす日、そんな佐渡さんのご自邸を訪ね、お話を伺いました。

3.好きなこと ~気になる建築家の横顔 第2回~

2015.02.16

 

 

コーヒーでも淹れますね。

  • ありがとうございます。
    わあ、豆から挽くんですね。いい香り。
    落ち着いた空間で、おいしいコーヒーをいただいて、くつろぎますねえ。

僕も家では、こうやってここに座ってる時間が一番好きかな。
特に薪ストーブの時期はいいですね。

コーヒーもストーブのお湯で沸かしたら全然違うんです。時間をゆっくりかけてやると、角が取れてまろやかになる。

なんでも一緒だよね。
僕らの仕事も、すごく長い時間をかけてこつこつやるんだけど、やっぱりそうするといいものになるんですよ。勢いでバーッとつくったものは、どこか角が残った感じがするし。

  • これも「時間軸」というテーマにつながってくると言えますね。

  • ・・・さて、ところで。佐渡さんが建築の道に進まれたのは、どういったきっかけからなのでしょうか。

父親が設計の仕事をしていて、よく家に建築雑誌が置いてあったので、それを見ているうちになんとなくという感じですね。最初はそこまで明確な動機はなかったと思うんですけど、勉強するうちにどんどんハマっていったというのが正直なところです。

  • そうなんですか。

大学の建築学科に進んで、卒業後も1年半ほど大学に残って、ゼミの先生を手伝って設計をしていました。半分勉強、半分仕事のような感じで、コンペ前は徹夜続きでゼミ室に連日泊りこんでいましたよ。

その後、さっきお話ししたように「内藤廣建築設計事務所」に自分の作品を持って飛び込み、さらに「古市徹雄都市建築研究所」でも働きました。

企業に入らず個人の設計事務所に行ったのは、当時から将来的には独立したいという気持ちがあり、就職はそれまでの修行というつもりだったからです。

お給料なんかほんとに少なくて、東京で厳しい生活を送る毎日でしたが、独立するという目標があったからどんなにつらくてもやると決めていましたね。他の道は考えられませんでした。

  • そうして、1998年に倉敷に戻って「佐渡基宏建築アトリエ」を開かれたんですね。・・・以来たくさんの建築を手掛けてこられてお忙しくされているご様子ですが、お仕事を離れた、プライベートな時間についても伺いたいと思います。

うーん、最近これといって趣味的なことをしてないんだよねえ。
どうしても土日仕事をすることが多いから、オンオフの切り替えがあいまいだし。だいたい家にいると、デッキを塗るとか、いろいろ家のことをやらなくちゃ(笑)。

この日曜は屋根に登って、ストーブの煙突掃除をしましたよ。
それと犬の散歩かな。

  • かわいいワンちゃんがいますね!

ジャックラッセルテリアで、名前はソラ。
ソラが車に乗るのが苦手であまり出かけられないというのもあるし・・・やっぱり家でゆっくりしている時間が一番好きですね。ここにお酒があればもっといい(笑)。

  • お酒も飲まれるんですね。

好きですよ。特にワインだけど、焼酎でもビールでもOK(笑)。
水・土・日と、家で飲むのは週3日って決めてるんですよ。まあ身体の事もあるし、飲まない日があることで飲める日が楽しいですから(笑)。

外で飲むこともあるけど、基本は家。みんなにうちに来てもらってここで飲むのが、一番気兼ねがなくて好きですね。

  • 今、いいこと聞きましたよ(笑)。

ぜひまた来てくださいよ。

あと、趣味というものでもないですけど、音楽も好きです。ヒップホップを聴くっていうとみんなに「えーっ」って言われるんですけど(笑)。

  • えーっ!(笑)

ヒップホップといってもいろんなジャンルがあって、僕が好きなのはおとなしい雰囲気の、ジャズに近いようなもの。

「nujabes」(ヌジャベス)っていうアーティストがすごく好きなんです。
聴いてるとね、風景が浮かんでくるんですよ。夕焼けの景色とか。音楽で風景が表現できるっていいなあと思って。

僕はCDショップであれこれ視聴して、いいなと思ったらよく知らなくてもパッと買うんです。ジャケットを見ただけで「これ好みかも」と思って買っちゃうこともあるから、失敗も山ほどあるんだけど。

あるときふと、家にあるアルバムのうち4枚ぐらいに同じ「nujabes」の名前が入っていると気づいて、やっと彼のことを知ったんですよ。

それで調べてみたら、少し前に亡くなっているということがわかって、ショックでしたねえ。

  • えっ!!そうなんですか・・・。それは残念ですね。そのヌジャベスはどんなときに聴かれるんですか?

仕事中ですね。周りの雑音をシャットアウトしたいから。
ずっとヘッドホンして、音楽を聴きながら仕事をしています。

  • ・・・それから旅行が好きとおっしゃっていましたが、最近はどちらか行かれましたか?

旅行もここのところは3年に1度ぐらいしか行けてないんですけど、一番最近ではタイに行ったかな。

旅行に行くと元気になりますね!
あっちこっち走り回って、写真をバシバシ撮ってね。
興奮しすぎて、後でぐったり疲れが出るんですけど(笑)。主にはヨーロッパが好きだけど、アジアの感じも大好き。

タイ料理はおいしかったですねえ。向こうの暑い気候に合ってるんですよ。辛い料理だって僕は全然大丈夫で、カレーにもじゃんじゃんタバスコかけて食べるぐらい。

  • アジアのほうにも行かれるんですね!次に行くとしたらどこに行きたいですか?

行ってみたいところはいっぱいありますよ。
次に行きたいのはポルトガルかな?奥さんは南仏もいいなと言うんですけど、僕はもう行ったことがあるからね。

  • 奥さまと一緒に行かれるんですね。

そうですね。パックツアーじゃなくて自分たちで手配していくから、もう珍道中 (笑)。

僕は計画とかほんとダメで(笑)、奥さんが全部やります。
何日にこことここに行って、そのために何時の列車に乗ってとか、彼女はスケジュールをびっちり決めるんですよ。僕は行き当たりばったりで行きたいタイプだから、「もうちょっとゆっくりしようよ」とか「まだいいじゃない」と言って困らせてます。

  • まあ、両方が行き当たりばったりでも困りますから、役割分担なんでしょう(笑)。

前の旅行ではホテルで金庫が開かなくなって、そのせいで既に買ってあった翌朝のバスのチケットがパーになったんですよ。僕のミスが原因なんだけど、彼女に怒られて、逆に「だいたい計画なんか立てるから失敗するんだ」って文句言っちゃった(笑)。

でもなんだかんだあっても、パックツアーで行こうとは彼女も言わないから、また次もそんな感じの旅になるだろうね。

  • もの静かな佇まいから想像できないことばかりですねえ。知れば知るほど、奥深さが感じられますね。

つづく ・・・ 4回連載 最終回「4.なるようになった形」は2月23日UP予定です。

2014年10月 取材
文:吉田愛紀子

 

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佐渡基宏建築アトリエ

岡山県倉敷市中央2丁目10-7 2F-A Tel.086-434-6557

http://sado-a.com/