3.建築家として大切にしていること

ARTBOX建築工房一級建築士事務所
野田 大策さん

 

2019.09.02

 


 

野田さんが好きな建築家は、吉村順三、宮脇檀ら。「西七区の家」の落ち着いた空間体感すると納得します。ハウスメーカー勤務を経て、2011年、自らの設計事務所をお父さまとともに立ち上げました。建築家として大切にしていることは、お客さまの何気ないひと言、だと教えてくれました。

 

父が図面通りに造った犬小屋が
建築家を志すきっかけ。

 

― 野田さんが建築家を志したきっかけは、何だったのでしょうか。

小学生の頃、僕が初めて犬を拾って来たんです。その時、父が犬小屋を作ってくれたんです。
普通の犬小屋なんですよ。でも、まず図面を描いて、その通りに犬小屋が出来上がったのを見て、子ども心にすごいな、と感動した記憶があります。
もしかすると、それがきっかけかもしれません。僕に見せようと思って図面を描いたわけじゃなく、たぶん、材料を取るのに寸法が要るから描いたんだと思いますが、とにかく、すごいと思ったんです。

― お父さまはどういうお仕事をされていたんですか。

小さなゼネコンのような会社で図面を描いて、お客さまと折衝して、契約が決まったら、自分で現場監督をする、というような仕事をしていました。夜8時、9時には帰って来て、家では仕事はしていませんでした。

― 野田さんは、どういう経緯で建築家になったのでしょう。

具体的に建築の道に進んだのは大学に入ってからです。中学、高校の時は父の現場の掃除とか解体後の片付けとかに行ったりはしていました。
高校に進む時、建築学科に行きたいと言ったら、母に止められた記憶があります。当時、岡山で建築を専門で学べる場所はなかったような気がします。

大阪の大学の工学部建築学科に進んで、卒業後、積水ハウスに入社しました。
設計を担当していて、設計と現場は完全に分業なんです。でも大工さんから呼ばれて現場に行くことは、ちょくちょくありました。
2003年に入社して、2011年にこちらを設立するまで勤めていました。

― 仕事をしてきて、心に残っている出来事はありますか。

会社勤めをしていた時は、営業担当が間取りを作って、それをお客さまが気に入られて、契約することがあったんです。
でも初めての打ち合わせの時、「この敷地には、こういう計画をするべきだ」と考えて、思いきって一からの変更をさせていただいたんです。
20代そこそこで勇気のいることで、お客さまも半信半疑だったと思います。
でも、その後、お引渡しのあとで、「あの時、野田さんの提案を受けて、全変更して本当に良かった」と言っていただいた時には、アドレナリンが出ました。

 

流行り廃りとは関係のない
ちゃんとした木造建築。

 

― 野田さんの好きな建築家は?

吉村順三、宮脇檀は、ちゃんとした木造を建てる建築家で、現在も、彼らからの流れで設計をしている方が多いんです。
流行り廃りとは関係のないところで、今、見ても全然、古さを感じない。
これなんか、宮脇さんが1960年代とか70年代に設計した家ですが、大工さんが主流だった頃に、ちゃんと図面を描いていたんです。
彼らの設計図集を読んで、真似できるところは、真似していました。

― 現在のお客さまは、どういった方が多いのでしょう。

今はホームページなどを見て、「こういう家を作って欲しい」、「木の家を作りたい」と言ってくださる方が多いです。

― 施主さんに対して心がけていることは何ですか。

何気ないひと言を聞き逃さないようにしています。
例えば打ち合わせで、ご夫婦でいらした場合、僕に「こうしたいんです」とお話してくださる時ではなく、例えばですが、奥さまが旦那さまに、「本当はあれがいいんだけど」と言って、「今、そんなこと…」と旦那さんが答えていたりすれば、そういうことを次回の打ち合わせまでに何とか反映させたいと思います。
そうすると、喜んでいただけるんですよね。

つづく・・・4回連載 最終回「4.すべてがきちんと「納まる」ように 」は9月9日UP予定です。

2019年5月 取材
文:尾原千明

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