このシリーズでは、建築家さんご自身の日ごろの暮らし方や
プライベートな関心事といったお話を通じて、その人となりを探ります。

シリーズ第6回目に登場してくださるのは、株式会社 FOMES design・代表の髙見修一さん。
髙見さんは環境に優しいOMソーラーハウスや、建築家と二人三脚で家づくりを考えるプロジェクトなど、家族みんなが笑顔になる家づくりの提案を続けていらっしゃいます。
凛とした冷たい空気に包まれた日、髙見さんのご自邸アトリエを訪ね、お話を伺いました。

4.みんなの笑顔が見たくて ~気になる建築家の横顔 第6回~

2016.03.28

 

 

  • 前回、設計コンペのプレゼンをご自邸で行ったという話を聞きました。住宅ではないその物件とは何でしょう?

幼稚園です。幼稚園建て替えにおける設計コンペをやるということで、お誘いを受けまして。
基本的には住宅屋(住宅がメインの設計事務所)なので、そんな大きな建物は無理じゃないかとは思ったんですけど、ふと考えたんです。

幼稚園って園児が半日暮らす家じゃないか、と。

  • あぁ!

それでコンペに参加することに決めました。ライバルのほとんどは小学校や中学校を設計している事務所です。私は家や店舗の経験しかないんですよね。ただ、その幼稚園は民間(私立)だったので、公共の仕事をしてないところも参加させてもらえた。

誘っていただいたご縁もあるし、ここは大きな家=集合住宅を造るようなイメージで参加することにしたんです。

コンペに向けて図面を描いたり、模型をつくったりして、さてプレゼンテーションはどこでどう喋ったらいいかなと考えたんですけど、設計の中にOMソーラーというシステムを使っていたものですから…

  • この床暖房の、ですね?

はい。屋根が受ける太陽の熱で軒先から取り入れた空気を温め、冬はその空気を床下に送って床暖房に。夏はその熱を利用して給湯に使う自然にも体にもやさしいシステムです。

岡山は晴天率が高いので、太陽熱を利用したシステムを提案したいなと思ったんです。ちなみに我が家にはそれがついているんですよ。じゃあ、見てもらうのが一番!

そこで、家に来てもらおうということになりまして、幼稚園建て替え設計のプレゼンテーションをこのリビングでやりました(笑)。

  • 当日の様子はどんな感じだったんでしょう?

園長先生は来られなかったんですけれども、副園長の方と事務担当の方、2、3人が来られたでしょうか。これがOMソーラーというシステムで、空気がきれいで、という風に説明をしたんです。冬は寒くないですよって(笑)。

  • その結果は…

見事に採用!

  • やりましたね!

ありがたいことです。

 

 

  • 写真を見ると、園児たち元気に駆け回っています。

どれだけ園児のしもやけの数を減らすか?というのが使命かなと思っていました(笑)。

  • この感謝状はもしかして…。

幼稚園からいただいたものです。贈呈式もあったんですよ。園児たちが遊技場で歌を歌ってくれ、園長先生が「感謝状!」と言って読み上げてくれるわけです。前では園児たちが拍手をしてくれました(笑)。

  • なかなか経験できないことですよね。

 

そうそう、めったにないことです。

通常、建築の竣工写真って人物が入ってないものがほとんどなんですよ。でも、やっぱり、私が創りたい家は「人が主人公」だと思っているので、どうしても人物を写真の中にいれたくて。
で、園長先生にお願いしました。今の時代ですから、プライバシーの問題などいろいろと制約はあったと思うんですけど、ご協力いただけて無事このような竣工写真が完成したんです。

  • 当時いた園児たちが映っているわけですね。子どもたちが入ると、建物もイキイキとしているように見えますね。

皆さんの笑顔が何よりうれしかったですね。

 

  • これまで手掛けてきた住宅の中で印象に残っているエピソードがあったら教えていただけませんか。

感慨深いエピソードは数多くあるんですが、その中の一つ ―5年前の3.11(東日本大震災)で被災された方の家を設計させていただく機会がありました。

その年の6月初めに夫婦そろって事務所を訪ねてこられたんですけど、お話を伺っているうちにご主人が「一昨日まで福島にいたんですよ」と言われるんです。

  • え? それは驚きですね。

 

地震が起きてすぐ、奥様とお嬢さん2人をご主人の実家がある岡山県に帰らせ、ご主人は5月いっぱい福島で勤め先の残務整理を行っていたそうです。
3月から2ヶ月間は遠距離生活を続けながら、電話やメールで家族会議が繰り広げられ、最終的には岡山への移住を決断。土地はあるので、家を建てたいんですと相談しに来られました。

  • FOMES designのことは以前からご存知だったんですか?

いえ、2ヶ月の間に岡山と福島、それぞれネットサーフィンしながら設計事務所を探したんだそうです。そこで、夫婦の共通意見でうちが当たったんですね。

実は以前に中古マンションを購入され、自分たちで漆喰を塗ったり、フローリングを張ったり、DIYを経験されていたんです。それで、暮らすならナチュラルな家がいいね、と方向性はきまっていた。そろそろ家を建てようと思っていた矢先に地震が起こったんだそうです。

  • なんということ…。 ご夫婦の描いていた家のイメージがFOMES designのテイストとぴったり合ったんですね。

その家づくりは、被災後、限られたお金でどうやって家を手に入れるのか?というところからのスタートでした。最初の段階では、しっかりした内装もできないような状況だったんです。極端にいえば、ベニヤ板の中で暮らせますか?と…。

  • 厳しい状況だったんですね。

そのご夫婦は「友人たちは仮設住宅で暮らしています。だから、ベニヤ板の中で暮らすことは大丈夫です」と言われました。ただ、長持ちしない中途半端なものをつくるよりは、壁紙やフローリングはすぐなくてもいいから足し算で良くなっていく家を手に入れたい。それがご夫婦の願いだったんです。

  • 切実な想いが伝わってきます。

ご夫婦と一緒になっていろんなアイデアを出し、画策して、結果的には素敵な家が建ちました。工務店の協力がなければとてもできなかった家です。

  • 被災者の方が、この岡山の地で家族そろって安心して暮らせていること。岡山県民としてうれしく思います。

東日本大震災が起こり、福島でも大変なことが起こりました。募金活動をあちこちでやっていましたけど、私の中でぴんとこない感じがしてたんですよね。募金してお金の行き先はどうなんだろう、と。ただ、何かできないかなという想いはいつもどこかにありました。

間接的かもしれませんが、そのご家族を通して、岡山に住んでいる私にも何かできることがある、と思えたことがうれしくて思い出深い物件となりましたね。

… この話には後日談があって…。

  • 後日談?

 

我が家の近所に私が設計を手掛けた家があるんですけどね、そこの方が友人と居酒屋へ飲みに出掛けたらしいんです。その友人がもう一人友人を呼んでいるから、と。

実は、そのもう一人の友人というのが福島から移住してこられたお施主さんで…。

  • ということは、お施主さん同士が友人を介してつながっていた?

そうです。それも、「最近、家を建てたんだよ」という話題になってから分かったみたいで、「倉敷の設計事務所にお願いしたんだけど、それがFOMES designというところで…」という名前が出た途端、「あれ、自分もそうだよ!」ということになり(笑)。
ご近所のお施主さんから、この前偶然に出会ったんですよ、と報告がありました。

  • びっくりですね。

本当に(笑)。でも、岡山県は狭いのでびっくりするような出会い、つながりは多いですね。

  • なんだか、高見さんのお話を伺っていると、その家に暮らす人の気配、息遣いのようなものが感じられますね。
    たくさんの素敵なお話をお聞かせいただき、とてもたのしいひと時でした。今日はありがとうございました。

2016年1月 取材
文:松田祥子

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株式会社 FOMES design

岡山県倉敷市本町9-18 Tel.086-423-5488
http://www.fomes.net