このシリーズでは、建築家さんご自身の日ごろの暮らし方や
プライベートな関心事といったお話を通じて、その人となりを探ります。

シリーズ第5回目に登場してくださるのは、岡本光利一級建築士事務所代表の岡本光利さん。
スタイリッシュなデザインと自然素材の持ち味を生かした心地よい空間。
岡本さんは住まう人のライフスタイルや人生観、自然、周辺環境との調和も織り込まれたトータルバランスの良い家づくりを手掛けられています。
澄み渡る秋晴れの下、岡本さんのご自邸アトリエを訪ね、お話を伺いました。

4.社会が豊かになる器づくり ~気になる建築家の横顔 第5回~

2015.12.28

 

 

  • 今年10月、岡本光利一級建築士事務所設計の物件「LIGHT COURT HOUSE(ライトコートハウス)」が2015年度 グッドデザイン賞を受賞されました。10月30日から11月4日まで、東京ミッドタウンで受賞展もあるんですよね。本当におめでとうございます。

ありがとうございます。過去に3回トライして、3回とも一次審査通過どまりで悔しい思いをしていたので、今回の受賞は大変うれしいです。クライアント、OB様、各種施工関係者にも喜んでいただき良かったです。

  • この「LIGHT COURT HOUSE(ライトコートハウス)」の概要を教えてください。

ここは道路の奥地で行き止まりの土地なんです。お客様のご要望は「シンプルで箱型形状の白い家、中庭のあるビルトインのガレージハウス」でした。

  • ビルトインのガレージハウスとは?

建物内部に駐車スペースを確保した家のことですね。1階部分に車が入るように大きな開口部を持つのが特徴です。庭などに設けるカーポートとは異なり、車をすっぽりと壁面で覆うことができるため、車を風雨から守れます、また、天候を気にせずに買い物荷物の出し入れや人の移動が可能です。

  • それは便利ですね。

 

行き止まり道路だったので、まずは車が出入りしやすい位置に車庫を配置し、クライアントの要望を取り入れた平面計画でデザインしながら進めていきました。行き止まり道路の場合、その奥にいる人しか近寄らない、近寄りがたいという雰囲気があります。だからこそ、地域に向けて開放された前庭を設け、風通しの良い、抜けのある街並みを考慮しました。また、周辺住民の方にも、彩りやナチュラル感が感じられる外観を意識しました。

  • 「ライトコート」とはどういった意味ですか?

中庭、光庭という意味ですね。ここは近くに駅があり、新幹線の音が聞こえてくるんですよ。そういう環境もあって、あえて壁を防音壁にしながら、中庭(ライトコート)も形成するようなデザインにしました。中はルーフバルコニー、ライトコートのあるシンプルモダンで広がり感ある住まいになっています。

敷地周辺に対しては開放されていますが、箱型形状で周囲を程よく囲い、お客様のプライバシーはしっかり確保。そして、室内は上から光を取り入れる、開放的な明るいイメージですね。

  • 確かに外から見るとシンプルな箱型で、中の様子が全く想像できません。どうなっているんだろう?と。

そうなんですよ。中はどうなってるの?と思わせるような、ちょっと不思議ちゃんというか(笑)、そういう造りにしています。防犯上を考慮した間取りの分かりづらいデザインなんです。

  • なるほど。だから、室内の写真を見てびっくりしました。こんなに明るいなんて。

室内に関しては、ほどよくプライバシーを確保しながら、明るく開放的な空間が広がります。ルーフバルコニーとリビングダイニングがつながっていて、ライトコートから心地よい光や風が運ばれてきます。外部の空間とつながることによって、内部の空間がより広く感じるような仕掛けになっているんです。間接照明なども使い、天井が高く見えるように工夫しています。

  • ほぉー。中庭も通じているように見えるから、こんなに広がりを感じるんですね。

はい。全体がリビングのように見えるので、実際のリビングダイニングキッチン20畳程度ですが30畳くらいにいるような感覚になるでしょうか。でも、室内は狭いから、冷暖房は効率的に効くんですよ。

  • 経済的にもうれしいですね。それに、確かに広さが30畳あったとしても、人がいる場所ってそんなに広い範囲じゃないんですよね。ある程度限られてくるというか。

そうなんです。広ければ掃除も大変だしね、

  • ごもっともです(笑)。

そう考えると、すぐ温まるし、すぐ冷えるし、バルコニーに出ても壁があるので人の目が気にならないから、バーベキューをしたり、食事やお茶をしたりできますよね。おしゃれな家だと、ずっとおしゃれにしてないといけないかと思われがちですが、壁があるので、洗濯物も気軽に干せますよ。

  • おぉ、その暮らしぶりが見えてきました。外から全く中の様子が見えないことって、住んでいる人にとっては大安心ですね。

そうそう、風呂上がりでも、安心して外に出れますし(笑)。それくらいしっかり防壁対策をしておかないと、使えないですよね。特に女性の場合は。

  • 確かに…。

あと、風や音もいくらか防ぐので、台風のときも直接衝撃を受けないですね。断熱性も多少、向上します。

  • 安心ですね。しっかりとガードされていれば、心底からくつろぐことができそうです。

庭と建物と車、そこに人が入って、家具・カーテンというのもすべて入って1枚の3Dのキャンパスという感じでトータルコーディネートしたのがこの「LIGHT COURT HOUSE(ライトコートハウス)」なんです。

  • 写真を見るとあまりにもシンプルな形で想像もできませんでしたが、お客様のご要望とその土地の環境、空や緑、光、風などの自然も取り込み、美しい街並みにも配慮してデザインされた結果が今の形になったんですね。納得です。

  • 最後になりましたが、岡本さんにとって建築とは?

うーん、人や社会が豊かになる器とでもいいましょうか。

  • 器ですか?

家ってある時は安全に守ってくれるものであったり、楽しくしてくれるものであったり、つらい時を過ごすものでもあったり、さまざまな生活シーン生み出すドラマの背景のようなものですよね。
ただ「暮らす場」ではない。人や動物たちにとって居心地がいい、そこで楽しめる、元気が出る、街並みを彩る、そういった器になればいいなという気持ちで取り組んでいます。

  • 家を「器」に喩えて、中から、上から、外から、もっと遠くに離れて全体からじっくり眺めてトータルコーディネートしていく柔軟な視点が刺激的でした。実際に住んでみると、どんな発見があるのだろう?と、想像力が掻き立てられますね。
    毎日が楽しくなるような、安心して暮らせる岡本さんの家づくり、今後もご活躍を期待しています。長い間おつきあいいただき、ありがとうございました。

2015年10月 取材
文:松田祥子

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岡本光利一級建築士事務所

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