このシリーズでは、建築家さんご自身の日ごろの暮らし方や
プライベートな関心事といったお話を通じて、その人となりを探ります。

シリーズ第7回目に登場してくださるのは、有限会社 stage Y's 一級建築士事務所代表の竹澤由紀さんです。 お話をうかがっている間も、そのあとの数日間も竹澤さんから伝わってくるエネルギーで、こちらが元気になってしまう、そんなポジティブオーラあふれる方でした。 〈竹澤さんの近くにいると楽しいことがありそう〉と思わせる感覚は、建築を「ライフスタイルをコーディネイトすること」と捉えていることと繋がりがあるような気がします。

2.建築家という道 ~気になる建築家の横顔 第7回~

2016.09.12

 

 

  • 北屋建設に入社されたばかりの頃は、どういうお仕事をされていたんですか。

その前に勤めていた設計事務所で鍛えられたおかげで、だいたい図面は描けるようになっていたんですね。ただ、北屋建設ではすぐに担当が決まって、プランを作成することになったんです。間取りを描くことが好きだったこともあって、プランは出来たんですが、施工図面を描くことが難しかった。それで、過去のいろいろな図面を引っ張り出して来て、こういうときはこう描くんだ、ということをひとりで勉強しました。

建設を担当する部署から、図面の間違いに関するトークバックがないんです。つまり自分がチェックするしかないんですね。だから現場に行って、収まりとか、ここは何ミリ、ということを確認して、わからないことは大工さんに聞きまくりました(笑)。

  • その頃は夜遅くまでお仕事をされていたんですか。

建設部の人は18時くらいで帰って、設計の先輩は19時、20時頃までいたかな。私は遅くまでひとりでやっていました。いざ担当が決まると、一軒の家の図面を全部描かなくてはいけないんです。凝れば凝るほど時間を費やしてしまう…。

  • でもやっちゃうんですね(笑)

それが独立するにあたってはよかったんですけどね。お客さまを大切にしていたので、独立して、すぐ依頼もありました。

 

  • 建築士の資格を取られたのは、お仕事をされながらですか。

20年ぐらい前かな? 仕事をしながら半年ぐらい学校にも通っていたので、すごく大変でした。実際の現場と試験は違いますから、仕事はしていてもあまり試験の役には立たないですし、体調を崩しながら頑張りました。

  • その後、独立されたんですね。一つひとつの仕事、すべてを覚えていらっしゃる、とおっしゃっていますね。ブログを拝見していると、お客さまと良い関係を築かれているんだなと思います。

すごく良いです。幸せ者です。親が早く亡くなったぶんだけ、私には良い方々との巡り合わせがあるのかなと思っています。

 

  • 竹澤さんの設計する建物には、細やかな工夫がなされているので、お客さまは女性が多いのかなと思ったりするのですが、いかがでしょうか。

メインはやはりご家族ですので、ご主人だけがお話をして、「こうしてください」ということはないですね。ご夫婦おふたりの意見が一致しているから、設計事務所を訪ねてくださるということですね。

みなさん最初は住宅展示場を回られると思うんです。そのなかでちょっとこだわっていらっしゃる方、ご夫婦ともにこだわりのある方でしたら、「ちょっと(違うよね)…」となって、設計事務所を調べて、扉を叩いてくださるという感じです。だから、こだわりとしてはご夫婦で意見が一致しているので、良い話になりますね。

 

  • たとえばですが、この竹澤さんのお宅で先ほど拝見した、バスルームの壁に斜めに出窓をつける発想。ああいうものは住宅メーカーのつくる家では見つけられないなと思います。これこそ欲しい細部のデザイン、というか。

ああ、あれですか? ルーバーがこちらから見えないようにしたかったので、ああいう形にしました。ルーバーになっているのでお風呂上がりに風を通せるようにはしています。

この家は絵や置いたものが映えるように、真っ白にしたかったんですね。その中で色が欲しかったのが、stage Y’sのイメージカラーであるブルー。だから浴室に縦に並ぶ、ガラスブロックをブルーにしたんです。

 

  • 竹澤さんは好きな建築家としてルイス・カーンを挙げられていますが、どういうところがお好きなんですか。

ルイス・カーンはね、木をたくさん使っていて、ちょっと日本的なところがあって、空間の造り方がすごく上手だなと思っています。そこが私は好きなんです。キューブの建築をすると、外国の建築家でも、平面にそのまま窓を付けたりするじゃないですか。それがルイス・カーンは優しいのか、そういう形態にはしないで、そうかといって窓を外側に出して庇(ひさし)をつけるわけでもなく、反対に壁を内側に控えて窓をつけているんですよ。窓を開けても直接、雨が入らないような配慮をしているんですよ。そのやり方は私も取り入れさせてもらっています。

  • なるほど。あともう一人、出江寛さんについては。

出江寛さんは竹中工務店の出身で、叔父の秘蔵っ子だったと聞いています。出江さんもディテールを継いでいるので、すごく勉強しました。彼の創ったものに関しては作品集もたくさん出ていて、図面も多く載っているので、それをよく見ていました。

  • 竹澤さんは勉強をしながら、同時に楽しまれてるという感じがします。どういうものが刺激になっているんですか。

やっぱり本物の建物を見るのが一番の刺激ですね。県外にはなかなか行けませんが、本物を見ることですね。雑誌だけでは到底つかめない感性もわかります。

 

 

  • この「stage 39 noir et blanc」は、いつ頃の設計なんですか。ロフト部分にワクワクしますね。

 

これは2006年、私が独立して初期の頃ですね。あそこはピアノ置き場とご主人の書斎を兼ねた場所です。平屋ですので天井を高くしたんですが、4メートルぐらいありますね。ここは、それこそルイス・カーンの写しをして、窓を奥に引っ込めていて、庇がなくても雨が降ったとき、雨が入りこみにくいようにしています。

 

  • この「noir et blanc」というのは?

この家は、白と黒でいきたかったんですよ。それでこういう名前(フランス語で黒と白の意)。全ての家に名前を付けるんです。

  • 庭が出来る前と後では、家の印象がずいぶん変わりますね。庭のデザインもされたのですか。

自宅が出来て2、3年経ってから庭をやることになったんですが、庭については、私が尊敬している庭師さんで、福田義勝さんという方がいらっしゃるんです。ですので、施主さんから好きな樹などを教えていただいて、私から福田さんに「このあたりをこうして欲しい」と大まかなことを伝えて、構成はお任せしました。

  • そういうつながりはとても大切ですよね。

 

つづく・・・4回連載 次回「3. 犬たちのこと」は9月19日UP予定です。

2016年7月 取材
文:尾原千明

 

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