このシリーズでは、建築家さんご自身の日ごろの暮らし方や
プライベートな関心事といったお話を通じて、その人となりを探ります。

シリーズ第7回目に登場してくださるのは、有限会社 stage Y's 一級建築士事務所代表の竹澤由紀さんです。 お話をうかがっている間も、そのあとの数日間も竹澤さんから伝わってくるエネルギーで、こちらが元気になってしまう、そんなポジティブオーラあふれる方でした。 〈竹澤さんの近くにいると楽しいことがありそう〉と思わせる感覚は、建築を「ライフスタイルをコーディネイトすること」と捉えていることと繋がりがあるような気がします。

3.犬たちのこと ~気になる建築家の横顔 第7回~

2016.09.19

 


 

  • こちらの部屋(事務所)は気持ちのよい解放感がありますよね。窓のせいでしょうか。

 

この部屋は西向きだから、あまり開口部を大きくしたくなかったんですけど、建物の正面になるじゃないですか。だから大開口にしたんです。そして、新築で植えたこの木に、夜はイルミネーションを点けてるんですよ。こっちがね、ハナミズキで、向こうがヤマボウシです。

  • 緑が迫ってくるって、何とも言えない良い気分ですね。

植えたばかりの頃は、2階にいても見えなかったんですが、13年経ってここまで大きくなりました。ハナミズキとかヤマボウシの花は上向きに咲くから、上から見る花なんですって。

  • そんな事務所で、若い女性と一緒に仕事されているのが良いですよね。

 

いいでしょ。現場に行ったら、「娘さんかな?」ってよく言われます(笑)。

  • そして、柴犬のテラちゃんも事務所のスタッフなんですね(笑)。ブログを拝見していても犬たちのことをたくさん書かれていますね。こちらの精悍なお顔の先代スタッフ・アリ君はどういう性格だったんですか。

自閉症気味だったんです。もらって来たとき、河原に放してあげたんですが、ふつう仔犬は「おいでー」って手を叩いてあげると寄って来ますよね。でもアリは一目散に遠くまで走って行ってしまって(笑)。

 

人の顔を見ない、声を聞かない、というコでした。ペットショップにいたんですが、お母さんから一匹だけ生まれたという話で、「雑種だから売りものではないけれど、ほかの方にあげようとしているんです」って言われたんです。でも生い立ちを聞いたあとで抱っこさせてもらったら離れられなくなってしまって。

ペットショップの方も、「じゃあ、良いですよ。連れて帰ってください」と言ってくださったんです。テラが来てから動物愛護のことを勉強したので、今ならペットショップに行かずに、殺処分前の犬を引き取っていると思います。

  • 一緒に生活しているうちに、アリ君の性格は変わって来たのでしょうか。

少しずつです。このテラは吠えないでしょう。でもアリはお客さまが来られるとずっと吠えていました。だから自宅のほうに連れて来て、お客さまの姿が見えないようにカーテンをおろしていました。

 

  • ところで、テラちゃんの名前の由来は、地球ですか?

そうです。アリは18歳まで生きてくれたので、テラを迎えたとき、テラが18年生きるとしたら、私の年齢を考えると、もうそのあと別の犬と暮らすことはないなと思って。私が地球で一緒に過ごす最後のコ、という意味でテラと名付けたんです。

  • 小さい頃から犬は飼ってらっしゃったんですか。

小さい頃、両親が保健所から処分される寸前のシェパードを連れて帰って飼っていました。いいコだったので、私はよく檻のなかに一緒に入って遊んでいました。少々耳を引っ張ったり、尻尾を引っ張ったりしても怒らなかったですね。黒い毛だったから「クロ」という名前を付けていました。

クロのあとは飼っていなかったんですが、私が20歳を過ぎて父とふたりで暮らしていたとき、もう一度シェパードを飼いました。御津(岡山市北区)のほうで仔犬が生まれたというので、父と出かけて。ショーのチャンピオン犬を出している所でしたが、メス2頭とオス1頭が残っていたんです。3頭のうちのオス1頭だけが長毛で、「この子はショーには出せませんよ」と言われて、ちょっとおもしろいからその子にしました。40kgぐらいだったかな、クマみたいでした。その子も賢かったですよ。

  • そうなんですね。そして竹澤さんは、「愛犬家住宅コーディネイター」という資格をお持ちなんですよね。

アリが亡くなるときに取ったものですから6年前ですね。アリの亡くなった日の2日後かな、大阪で試験があって。岡山市で取得したのは私が初めてです、岡山県では2人目ですが(笑)。

  • それはニーズが高まってのことですか。

そうですね。これまで犬を外で飼っていた人が段々と家の中で飼うようになったという背景はあります。犬も家の中で事故が起こりますし、人間も犬が家の中にいることで問題が出て来ます。自分が犬を飼っているから、そういう問題もよくわかるし、犬と人間、両方の言い分を聞いてあげたいなと思ったんです。

 

 

  • 「愛犬家住宅」は、どういうところに特徴があるのでしょうか。

犬の観点から言えば、一番は床ですね。
今の住宅の床は合板フロアが多いんですが、それでは犬は滑ってしまいますので、滑りにくい材質を選んだり、表面をコーティングしたりします。

あとは犬の居場所をつくること。犬は調子がわるくなると静かに籠っていたいので、お座布団一枚でもいいから、そういう場所をつくってあげることは大事なことなんです。
先日、犬を飼っているお宅のリフォームをしたんですね。お話をうかがうと、日中、誰もいないときにソファや部屋のなかを荒らし放題だということでした。それは居場所がないからだと思い当たったので、外の景色を見ることが出来る場所に、居場所をつくってあげました。

 

そして人間側から言えば、匂いですね。新しく家を建てる場合は、壁材に珪藻土といったものを使うことで随分変わります。

  • 愛犬家住宅に限らないことだと思いますが、設計をしながらライフスタイルのプロデュースも同時にされているということですね。

それがメインです。ご家族によって考えていらっしゃることはまったく違うんですが、建築に関する知識がないとうまく説明できない場合は多いですよね。そこでお客さまの言葉から、いかに理解してあげられるかが大切になります。理解して、「こうこう、こうしたらいいんですよ」と伝えると、「そうそう!」と言われることが多いです。そういう提案をしていくことが私の仕事ですね。

 

つづく・・・4回連載 最終回「4. 広がっていくもの」は9月26日UP予定です。

2016年7月 取材
文:尾原千明

 

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