このシリーズでは、建築家さんご自身の日ごろの暮らし方や
プライベートな関心事といったお話を通じて、その人となりを探ります。

シリーズ第7回目に登場してくださるのは、有限会社 stage Y's 一級建築士事務所代表の竹澤由紀さんです。 お話をうかがっている間も、そのあとの数日間も竹澤さんから伝わってくるエネルギーで、こちらが元気になってしまう、そんなポジティブオーラあふれる方でした。 〈竹澤さんの近くにいると楽しいことがありそう〉と思わせる感覚は、建築を「ライフスタイルをコーディネイトすること」と捉えていることと繋がりがあるような気がします。

4.広がっていくもの ~気になる建築家の横顔 第7回~

2016.09.26

 


 

  • 竹澤さんは、お仕事に夢中になりながらも、ご自分の楽しみをちゃんと確保してらっしゃる感じが伝わってきます。

 

そうですね。もっと時間があれば色んなところに旅行にも行ったりしたいですけどね。でもこの子(テラ君)がいるから遠出はできないし、時間的にも遊びに遠くに出ていくことはできないので、そうなったときにはもうおいしいもの! ご褒美は唯一、おいしいものを食べて、大好きなワインを飲んで、大好きな仲間と一緒に過ごす。それが一番です。

  • みなさん、こちらに集まるんですか。

色々ですが、何カ月かに一回はここでワインパーティーをやっているんですよ。ワインパーティーというかワイン勉強会かな。
ワイン会を以前は定期的に、季節ごとにやっていたんですけど、BAR LYTTON(岡山市北区幸町)の桜井さんが亡くなられてから調子が狂っちゃって。最近は講師を探すのも大変だし、年に2回ぐらいしか出来ない感じですね。

  • おいしいものはご自分でも作られるんですか。

作るんですよ。何が得意だろう、パスタは上手ですよ。タラコとか黄ニラとエビとか、いろいろなもので作りますが、定番はトマトソースですね。
バジルは毎年4株は必ず植えるから、いっぱいあるんです。これを季節が終わる頃にバーッと採って、ジェノヴェーゼをつくったり。バジルの向こうにはパセリがあるんです。

 

テラスは今、塗り替えの途中なんです。この上にもう一度白を塗るんですが、なかなか雨が多くて工事が出来ないんです。

  • テラスも素敵です。この建物は、事務所とご自宅が同じフロアにありますが、このバジルやパセリの鉢が並ぶ中庭のテラスでうまく隔てられて繋いでるんですね。1階にはテナントのスペースもありますが、こちらは竹澤さんの設計ですか。

そうです。独立するにあたって、やっぱりお客さまに来ていただくのにふさわしい器が必要だなと思って。いつも21時頃まで仕事をしているので、夕方、ちょっと食事の支度をしたり、雨が降ってきたら洗濯物も取り入れられますし、テラにとっても良いと思います。

 

 

  • 建物は造りが複雑で、ぱっと見、どんな構成になっているのか、よくわからないところがまたとっても魅力的です。

 

これは建物が土地に沿った形になっているんです。ちょこちょこと出っ張った部分があるのは、ひょっとしたら、そこから旭川が見えるかなと思って、こういう造りにしているんです。ロフトからはしっかり、旭川が見えますよ。

 

  • 花火大会のときは、音も景色もすごいんじゃないですか。

花火はね、私、真下で見ないと気が済まないんですよ(笑)。一応、ここからも見えますけど、これではだめだって。もうドキューン、ドキューン、って体の中に音がズシーンとくる、あれが好きなんです。私はロックとか好きで、よくライブに行ってたんですよ。ガーンガーンってくるのがたまらんぜー、みたいな(笑)。

  • ふふふ。音楽はジャズもお好きなんですよね。

とくにコルトレーンの『Ballads』ですね。これは北屋建設にいる頃から好きで、私が一番最後まで仕事をして帰るでしょ。あんまりそれが毎日続くともう疲れきって、涙が出てくるんですよ。そういうとき、家に帰るクルマのなかで、このCDを聴きながら、「癒される~」みたいな感じ。

  • 花火を真下で見ないと気が済まないところや、疾走感、スピード感が好きというところは、本当に五感の人ですね。ところでご自宅や仕事場が川の近くにあることは大切な要素だったんですか。

そう、もう夢だったんです。ウォーターフロント! 本当は海沿いのウォーターフロントが夢だったんですけどね。まあ川があればいいかなと思って、川の近くを探していたんです。
遠くの方に一軒ありましたが、行ってみたら、近くにバス停もないし病院もないし、私はここで孤独死するんだろうなって切なくなっちゃって、こりゃあここはあかんと(笑)。

ここだったら街も近いし、歩いてでも街に行けるし。

  • テラちゃんの散歩に川へ行くのも近いし。テラちゃんとの散歩が、格好の気分転換の時間だそうですね。

犬の散歩は私のストレス解消タイムなので、散歩のときは空をよく見ています。私、空を「宇宙」と呼んでいるんですよ。見上げて、ああ、今日も宇宙がきれいだ、って。空を見ることが大好きで、旭川の埠頭の先端に立って、空と川の流れをじっと見ています。流れを見ていると、川岸が動いているような錯覚に陥るんですね。その感覚が好きです。

  • テラちゃんは、竹澤さんのそんな時間につき合ってくれるんですか。

テラはまだかなーって、近くでじっと待っています。

 

  • テラちゃんと歩きながら仕事のことを考えることはありますか。

仕事のことを考えることは少ないです。よっぽどプランに行き詰っているとか、悩んでいない限りは切り離せます。もうテラと過ごす時間ということで、本当にすっきりするんですよ。

一日中、図面を描いたり、頭を使っているので、精神的にではなく、身体的に疲れていますよね。それが川の流れを見ていると浄化されるような気持になるんですよ。だから私の定位置に誰かがいると、勝手なんですが、「ちぇっ」って思っちゃう(笑)。

私、夕焼けが大好きなんですよ。一番好きな景色が夕焼けなんです。夕焼けって一日一日必ず違うでしょ。何億年生きても何億通りの空があるわけじゃないですか。そのことに私いつもすごく感動しているんです。

  • 夜の空も見ますか。

星もたまに見ますね。でもやっぱり星よりも夕焼けが大好きですね。以前、住んでいた場所は、それこそ川辺から夕焼けが見えたんですよ。今でも時々、テラを連れて散歩に行きます。その頃は、「今日は夕焼けを見よう」と決意して、間に合うように帰ることもありました。すっごくきれいです。

ここは旭川の西にあるから、それがすごく残念。でも感動しますね。この感動がいいんだろうな、と思いながら見てます。

 

ここの建物からも、空は見えるから、夕焼けがきれいなときには屋上に行って、仁王立ちして「ワオー」って遠吠えしています(笑)。

 

  • 竹澤さんは、「天真爛漫な雰囲気も魅力だけど、情に厚く誇り高いサラブレッドのような生き方をする人」と、実は前もって聞いていたんです。もしかすると五感を大切にされているからこそ、それが出来るのかなと思いました。今日は本当にありがとうございました。

 

2016年7月 取材
文:尾原千明

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