このシリーズでは、建築家さんご自身の日ごろの暮らし方や
プライベートな関心事といったお話を通じて、その人となりを探ります。

シリーズ第8回目に登場してくださるのは、ヤマグチ建築デザインの山口晋作さんです。大学院では建築史専攻という経歴を持ち、地元では仲間とアート活動を行っている山口さんから出てくるお話は、時代や空間を自由に行き交う刺激的なもの。穏やかな口調ながらも、情熱的に熱く語られていた姿が印象的でした。

4.建築の力を信じて ~気になる建築家の横顔 第8回~

2017.03.27

 

 

(この記事は2016年11月17日に取材したものです)

  • 地元の活動に積極的に参加している山口さん。以前から児島出身の方は地元愛が強いように感じていました。個性的な人が多いような気がします。

現在はデニム作りで有名ですが、元々は学生服や作業着など繊維産業がさかんな地域でした。港があったことから、人や物の往来もさかんです。職人気質な方が多く、独立して自分で動く人の割合が多いのかもしれませんね。

児島にはたくさんの魅力的な店があるし、友人も多いので、オフの日は仲間に会い行って過ごすことが多いです。

 

 

…下津井弁って聞いたことありますか?

  • うーん、一般的にいわれる岡山弁は知っていますが…。どんな言葉なんですか?

下津井方言10選の中から紹介すると、

「くらりかえった」…くらがひっくりかえるくらい驚く
「やさこい」…あきれた
「さいでもない」…とんでもない
「しろぐ」…素知らぬ顔をする
「しおく」…しまうものを収納する
「さやがる」「ちばける」「へのる」…調子に乗る
「しない」…しなさい
「あじーな」…変な。

 

 

  • 初めて聞く言葉があります!

岡山弁であっても、単語自体がちょっと違う場合もあります。下津井は貿易港だったから、船つながりでいろんなものや人が入ってきた。関西や山陰などのいろんな地域の言葉が混じりながらできているのかもしれません。
だから、地元の人と話してもうまく通じない場合があって(笑)、僕は言葉が分かるからクリエイターズラウンジの中で地元との通訳(パイプ役)にもなっているかな、と。

  • 「児島マルシェ」(※)にもかかわっていると聞きましたが、それもクリエイターズラウンジの活動ですか。

また別組織なんですよ(笑)。
例えば、普通のサラリーマン家庭の人たちが、平日働いて、週末にどこか店に行こうと思った時、岡山のイオンに行く、問屋町に行く、倉敷の美観地区に行く、四国の高松に行く、など地元ではないどこかに出ることが普通になっていた状況がある、そういう状況に違和感を抱いていた一人の主婦の方が発起人なんです。
自分の街に住んではいるけど生活してない、暮らしていない、ということは、楽しんでいない。それはもったいないから、自分たちの街に自分たちが行きたい店を呼んで来よう、という活動が「児島マルシェ」です。ささやかな活動なんだけど、3年前にスタートし、年に2回開催しています。

 

 

  • 山口さんはどのようなことを担当しているのですか?

実行委員メンバーの1人です。それぞれ人には得手不得手があるので、みんなができることをしていこうというスタンスで、僕は会場設営の設営を担当しています。
以前は出店テントが縦に並んだり、横に並んだりしていたんですけど、僕が提案してぐるっとまん丸に並べるようにしたんです。大きな円と小さな円を描くように。

  • まん丸に…?

そうです。「Cafe Gewa(カフェゲバ)」と同じで、丸く並べた方が自然な関係性がつくりやすいのではと考えたんです。
碁盤の目のように並べるのも迷路チックで楽しいのかもしれないけど、人と人が触れ合うことを考えると、外にぐるっとテントを並べて、中にベンチを置いたり、テーブルを置いたりしながら、お互いの顔が見えるような設営にしました。

 

 

  • 設営の仕方で人の流れも変えたりできるんですか?

はい。ほどよい距離感というのがあってですね、あまり近すぎてもいけないし、遠すぎても散漫になるので。

  • なるほど…。会場の設営が人の関係性にも関連してくるなんてびっくりしました。

会場づくりも家づくりも基本的には同じで、人の動きとかかかわりなどを創っていく、デザインしていく、ということなんだと思います。半径何メートルの円を描いて、テントの間隔を何センチ間隔で設置するか、具体的な設営のためのことも私がしています。

  • そこまで具体的に?

そこまでしないとできないんですよ。テントの大きさもまちまちだったり、テントの置き方もそれぞれにあるので、図面を描いて、小さな円は6メートルでというように。

  • さまざまな活動においても、建築を学んできた山口さんの手腕が生かされているんですね。

 

 

  • 最後に、山口さんにとって「建築」とは?

建築は人々の活動や生活を、ある程度の形で導き与え提供するような働きがあると感じていて、小さな創造主というとちょっとおこがましいんですが、そんな役割を感じることがあります。

事務所に設置した蔀戸のところでも触れましたが、跳ね上がった部分が庇(ひさし)のようになることで、部屋の外ですが、空間が延長しているようも感じ、一つの空間が生まれます。また、いきなり外ではなく、囲われた感ができて落ち着いた雰囲気も生まれています。

 

 

古いものが魅力に思えるのも、普段は意識していないけれど、日本の原風景に通じるみんなの共通感覚のようなものがあって、そういった記憶に働きかけながら、優しさのような感覚を空間に演出することもできるんですね。
これが建築の力だと思うんです。今後も使う人の欲求を受け止めつつ、建築を通して一つの家族を幸せにしていくことが自分に似合っている気がしています。

 

 

  • 山口さんが建築家を志すきっかけになったヴォ―リズ改修の教会のことが思い浮かびました。やわらかくて温かい気持ちになれる場所―いつまでも記憶に残る空間づくりをこれからも続けていかれるのだろうと思います。今日はありがとうございました。

 

 

※「児島マルシェ」について
2015年から年2回(春・秋)開催されていた「児島マルシェ」は2016年11月の開催をもって終了となりましたが、大好きな「児島」をステキな街にできる活動は今後も続けられるようです。さらなるご活躍をお祈りいたします。

2016年11月 取材
文:松田祥子

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ヤマグチ建築デザイン

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