第3回 2.なおしながら暮らす

2015.07.13

 

 

――趣のある築90年の家。暮らし始めて6年過ぎた現在もなおリフォーム中だと聞いたんだけど…。

 

寛子さん:引っ越してくる前に、家の一部を解体してもらうのはお願いしたんだけど、床を張ったり、階段を移動したり、少しずつ自分たちでなおしながら住んでる。

 

――…ん、ちょっと待って! 階段を移動させたの?

 

寛子さん:もともと台所にあった二階の屋根裏へ続く階段が急で、台所のスペースも狭いから移動しよう、と。

 

――ほぉー、移動させちゃったんだ。すごい。

 

 

寛子さん:この調味料とか置いている棚は、解体した家の天井板を使って作ったもので。たちまち棚を持っていなかったし、これ棚にできるんじゃない?みたいなノリで適当に釘を打ってもらって。寸法は棚の幅、枚数も5枚しかなかったんだけど、できてみたらすごく使いやすくって。

 

――本当だ。しっかりしてる。台所にもぴったり合ってるね。

 

寛子さん:この食卓も見た目にはわからないけど、天板のサイズが左右少しだけ違っていて。
動いたり通ったりしやすいように水回りや棚のある東側が少しだけ短くなっているものを、秋岡くんがこしらえてきました。

 

 

――家のサイズに合わせてオーダーメイドって、なんと贅沢なことでしょう。
…それにしてもこの床、気持ちいい!

 

昌彦さん:杉の木ですね。越してきてから台所の床が冷たくて、杉はあたたかいので、上から張ったんです。でも、木自体がやわらかいから傷はつきやすいんですけどね。

 

――この絨毯もこの家にぴったり合ってるね。

 

寛子さん:これは実家の座敷で使われていた倉敷段通で、ここに越して来る時にもらいました。

 

――おぉ、何年もの?

 

寛子さん:35年くらい前のものかな? もう端の部分がボロボロで、倉敷段通の瀧山雄一さんに相談したところ、テープを巻きなおして修理できるみたいなんだけど、これを持っていけないという(笑)。

 

――え、大きくて?

 

寛子さん:うん。3mくらいあるのかなあ。裏側がいぐさなので一方方向にしか巻けないから長くて運べないの…。

 

 

――(笑)。このタンスも年代ものだね。

 

寛子さん:曾おばあちゃんの桐のタンス。とても使い勝手がいいよ。

 

――この古めかしい色合いがこの家にぴったり。

 

寛子さん:洗って柿渋を塗ってみたんよ。材質的に大丈夫なのか秋岡くんに聞いてみたら、いいんじゃない?って。
ここは虫食いになっていたから削って、新しく入れてもらったんだけど、まだ色を塗ってなくて。漆とか塗れたらいいなぁと。

 

――昌彦さんが木工で作られているのはどんなものですか?

 

昌彦さん:靴べらやコップ、他愛もないものから、テーブルやいすなどの家具まで。注文があれば大きいものも作ってます。

 

――じゃあ、家の改修はお手のもの?

 

昌彦さん:うーん、確かに木工はやっているけど、ちょっと勝手が違いますからね。床を張るくらいだったらできるけど、柱を取り替えたりとかはできないです…。
壁の漆喰を取り寄せるのも、ネットを見たら種類も成分もさまざまだし、自分の腕で扱えるものかどうか、値段のこともあるし。結構迷うんですよね。

 

 

――でも、やるならとことん調べてベストな方法でやりたいですもんね。

 

寛子さん:そうだね、特に土台になる部分は、やろうとしている方法が合っているのか、合ってないのかは調べておきたいというのはあるなぁ。
自分でとことん調べてこれにしようと決めたら、なんかそれでいいような気もするし(笑)。

 

昌彦さん:ネットはいろいろありすぎるから、結局は友達や知り合いの経験を聞いて、やっていくことが多いかなぁ。

 

寛子さん:まわりに同じような古い家を購入して自分たちでなおしている友達がいて、お互いに情報交換をしたり。「これが良かったよ」というアドバイスも聞けるし、すごく助かります。

 

――へぇ、そんなネットワークがあるんだ。

 

寛子さん:ネットワークといっても、内輪の小さいネットワークだけど(笑)。

 

――とはいえ、漆喰を塗ったらぐちゃぐちゃになって剥がれちゃうとか、難しいよという話を聞くと、そこでつい手が止まってしまうような気もするけど…。

 

寛子さん:うん。それなりにやってみるかな。だんだん慣れてきて、この家を全部塗ったら最後はすごく上手になってそうな気がする。

 

 

――職人のように(笑)。ふたりとも器用そうだもんね。ただ、平日はどちらもお仕事ですよね?

 

昌彦さん:はい。だから工事するときは限られますよ。台所の床を張ったのも12月の終わりだったかなぁ。

 

寛子さん:だいたいお正月かな。ご近所の皆さんにうるさくしてすみません…と思いながら。

 

昌彦さん:大晦日もやってたかなあ。30、31日とやって、元旦は休んで、そこから2、3、4日が工事。

 

――なおしたいところって、住んでいたら自然に浮かんでくるの?

 

寛子さん:うん。いろいろなおしてみたくなるよ(笑)。今日はリフォームの話をするだろうと思って、物件を探していたときにいただいた間取り図を探してみたんだけど。

 

――わぁ、見せて。

 

寛子さん:それを今朝見ていたら、ここは板張りにって書いてあるんだけど…

 

――…ど?

 

寛子さん:全然なってないなぁ、と(笑)。ここにもウッドデッキと書いてあるんだけど…

 

――…ど?

 

寛子さん:庭になっとる(笑)。

 

 

――あははは(笑)。リフォームの完成の目途って?

 

寛子さん:なんだかんだといって、ずっとなおしながら住んでるんじゃないかな(笑)。
実家のおじいちゃんも水道をなおしたり、建てつけの悪い所をなおしたりしながら暮らしていたから、それが理想かな。
必要以上にやることはないんだけど、気持ちよく住むためにできることは自分でやりたいなと思うし、できたら、この家がもともと建てられたときと同じ方法でなおせたらいいいな。

 

 

昌彦さん:改築をしていると、いろいろ出てくるんですよ。石の配置の仕方とか柱の跡で昔の家の構造が見えてくる感じで。
僕が調べたところでは、ここに柱がありますよね。もう1本がここまであるから、ここが土間だったんじゃないかと思う。ここに昔の普通の入り口があって、ここに板の間があって、囲炉裏があって…。

 

――へぇ~おもしろい。昔の姿を知る。想像する。古民家にはそういういった面白さもあるんですね。

 

 

寛子さん:新築で建てていたら、どこに柱があって、こうなっているという図面があるけど、ここの家の情報は引っ越し時にもらった間取り図だけだから、どこが大事な柱でというのを知りたいなと思う。

 

昌彦さん:この家は賃貸だったこともあり、いろんな人が改築しながら住んでいるからもとの構造からはだいぶ変わっていると思います。
ここにホゾが飛び出ているから、向こうに柱が通っているように見えるんだけど、その向こうにない。あやしいんです。こっち半分は大事な柱が取られているように思うんです。

 

寛子さん:昔の写真を見てみたいね。
そうそう、賃貸だったこの家はいろんな人が手を入れてるんだけど、柱やモノに、修理したときや購入したときの日付が書いてあるの。これ、すごくいいなと思う。あとに住む人たちが分かりやすくて。

 

――そっか、貴重な家の歴史だね。

 

寛子さん:それにならって、私たちも改築したときに日付を書いていこうと思ったんだけど…

 

――…ど?

 

寛子さん:それが書けないB型2人で、1回も書いてないなぁ(笑)。

 

つづく ・・・4回連載 第3回「3.庭のある家で暮らす」は7月20日UP予定です。

2015年5月 取材
文:松田祥子
キャプション:編集A

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