第6回 1.秋山さんと絵本

2016.04.04

 

 

 

【 秋山さんの住まいのあるマンションは、単一な規格の造りではなくて、エレベーターを降りて部屋にたどり着くまでの通路も、幾度か折れ曲がりながら進んでいきます。そこに情緒というか、親しみやすい風景が生まれているように思います。外を見ると目の前にはケヤキの木が伸びていて安心感もあって、そして、あ、向こうには岡山城が見える! 】

 

——:わー! このお菓子、今、揚げてくださってたんですか?! お子さんたちの分は?

 

秋山さん:大丈夫、ちゃんとあります(笑)。お茶を淹れさせてもらいますね。

 

 

——:なんだか気になるものがたくさんありますね。まず、このヒト型の作品。

 

 

秋山さん:毎年、家庭訪問のときに、先生がびっくりするんです(笑)。これは次女が幼稚園のときの卒業制作で作ったんです。そのときの身長を図って…。

 

——:お嬢さんの卒園のときのサイズになってるんですね?

 

秋山さん:そうなんです! なのに足も手も取っちゃって、短くして。顔は風船を膨らませて、そこに紙を貼り付けて立体的に作っています。顔の色は自分で作ったから、すごい色に塗ってるでしょう。

 

——:ふふ。独創的ですね。こちらは?

 

秋山さん:埃をかぶってるみたいになってますが、私が気に入っていて。次女が幼稚園に入る前くらいに描いたんですが、その頃、かまぼこ板みたいな顔の絵をたくさん描いてたんですよね。

 

——:子どもの絵が飾ってある家はいいですね。これは長女さんの絵ですか。

 

秋山さん:長女が病気のときに…、ダッフィーってご存知ですか? ダッフィーの缶を見ながら描いたんです。

 

——:すごく上手。療養中なのに根を詰めてる感じがします(笑)。

 

 

——:いつからこちらにお住まいなんですか?

 

秋山さん:もう11年になります。主のようにここにいて。長女が生まれるときに転勤で広島から岡山に来て、臨月のときに。生まれてからはずっとここなんです。こんなに長くここに住むとは思わず。

 

——:天体望遠鏡もありますね。

 

秋山さん:最近はあんまり使っていないです…。1年に1度くらい、中秋の名月のときくらい。ちょうど、東に向いているので、(窓)あのマンションの横くらいから月が出て、上がっていくのが見えるんですよ。夏は暑くていやなんですけど、名月のときだけは良い方角です。

 

——:これは操山ですか?

 

秋山さん:そうです! あれが多宝塔です。この景色がすごく好きで、転勤はいやだったけど、この景色はいい!と思ってたんです。そうしたら工事に入っちゃって、4年間くらいシートがかぶさっていて!

 

 

——:景色が新鮮で、とくに山が見えるって、すごく良いですね。

 

秋山さん:カーテンを締めて生活をするのはいやで、主人が最初にこの部屋を見に行ってくれたとき、「ここならカーテンを開けて生活できるだろう」って。

 

——:こっちが山で、反対側は街ですもんね。お子さんも絵本が大好きなんですか?

 

秋山さん:絵本から卒業しつつあって、もう児童書、分厚い本になっては来ているんですが、下はまだ絵本かな。

 

——:下のお子さんはおいくつですか。

 

秋山さん:4月から4年生で、長女は5年生になります。

 

——:じゃあ2人で、読むものもそれほどは変わらないですか? 私、結構今でも図書館の児童コーナーで本を借りるんですけど、このラモーナのシリーズとか好きです。

 

秋山さん:ラモーナ、面白いですよね。

 

 

〈 お茶を淹れてくださいました 〉

 

——:すごく良い香り。

 

秋山さん:マスカットですよ〜。

 

 

〈 ではそろそろ秋山暁美さん自身のお話を聞き始めましょうか 〉

 

——:絵本のお仕事を始めたきっかけは何だったのでしょう。

 

秋山さん:どこから話すのがいいかな。

私が子どもの頃、絵本を読んでもらった記憶がなくて、子どもが生まれたら本を読んであげなくっちゃ、という意識もなかったんです。でもお祝いにお友だちから絵本をもらって、「これ、良かったよ」という先輩ママからもいただいた本を読んだら、子どもの反応がすごく良かったんです。それで楽しくなってきたんです。

 

——:お母さんも楽しくなって?

 

秋山さん:そう。でも絵本を知らないから、何を次に読んであげたら良いんだろう、っていう疑問が湧いてきて、でもこっちに引っ越してきたばかりでお友だちもまだいないから、頼りの綱はネットで。

何でその方のブログにたどり着いたのかは覚えてないんですけど、絵本講師の活動をされている方で、その方が紹介してくれる絵本を読んでみたい、と思ったんです。

それを片っ端から読んで行くと、子どもがすごく喜ぶし、その喜ぶ顔が私は嬉しいから読んで、すると絵本を読むことがどんどん楽しくなって、「絵本って面白い、本って面白い」と思ったのが絵本を好きになった理由です。

 

 

秋山さん:で、こんな私でも子どもと絵本で楽しい時間を過ごせるようになったから。私はブログがきっかけだったけど、伝える場所を作ることで、絵本を好きになってくれるお母さんたちはもっともっと絶対にいる、って思ったんです。

そういう仲間が増えていくといろんな話ができて、面白いんじゃないかなと思ったことが、活動を始めたきっかけなんです。

 

——:お子さんの反応は、どんな感じだったんですか?

 

秋山さん:いちばん最初は、「あー」から始まって、指差したりして。絵本のページをめくると、目も右から左に動いて行くんですね。もしかして色がわかるのかな?!と思って。

 

——:それはお子さんがおいくつの頃ですか。

 

秋山さん:0歳です。

 

——:数ヶ月で?

 

秋山さん:何ヶ月頃から読み始めたかは覚えていないんですが、まだ首が座ってないから、わたしも一緒に寝転がって読んでいたら、目が動いてる、って。それで、色が派手なほうがいいのかなと思って。

 

——:その最初の本はありますか。

 

秋山さん:これを出したら長女はいやがるんですけど、私は講座に持っていってるんです(笑)。
これが友だちからプレゼントしてもらった本です。
題名は『じゃあじゃあびりびり』(作・絵:まつい のりこ 偕成社)で、もう今では本当にビリビリになってるの!

 

 

——:ああ、このサイズなら寝転がって読むのに良いですね。

 

秋山さん:色がカラフルでしょう。

 

——:わー、いい色、でも思っていたより、大人っぽい色ですね。

 

秋山さん:そう。これを読むとほんと喜んで、長女がもうちょっと大きくなると、キッチンで水道の水を出して、「じゃあじゃあ」って言ってあげると、わかるんです。

 

——:そこで実体験に繋がるんですね!!

 

秋山さん:そう! それで私が絵本を好きになったきっかけの大事な本だから、講座に持って行っています。ボロボロだから、「恥ずかしい」って子ども達に言われるんですけど。

 

——:赤ちゃんは本を齧っちゃうこともあるし、大人になったら良い思い出になりますよね。

 

秋山さん:そう、だから私は捨てられないから、お母さんたちにも「本は捨てないでね」って言っています。

 

 

——:本を読んでもらった記憶がない、というのは、昔は本を声に出して子どもに読み聞かせることが、それほど広まっていなかったこともありますよね。

 

秋山さん:たしかに。私の母が言うには、「当時、新しい住宅地に住んでいて、図書館がなかった。だからみんなで集会室を作って、そこに図書館から本をいっぱい借りて、本を読む環境はお母さんが作っておいた」って言うんですけど…

 

——:(笑)

 

秋山さん:その記憶は私には全くなくて、私が覚えているのは、「妹に読んであげて」と言われていたことなんです。いやいや読んでいた記憶はあって。

 

——:小さい頃から読む側だったんですね。おふたりのお嬢さんが最初に手にしたのは玩具ではなく、本だったんですね。

 

秋山さん:そうですね、本に対して反応が良いのと、本をヒントにして遊べるから、それが楽しくなったんです。積み木をするにも、積み木の本を読んで、じゃあやってみよう、みたいな。

 

 

——:子どもに対して、声に出して読むことの大切さというのはあるんですか?

 

秋山さん:やっぱりちょっと大きくなると、自分で読めるようになるので、そこで手放すお母さんも多いんですけど、お母さんが声に出して絵本の言葉を届けてあげるというのが、良いんじゃないのかなと思っています。

どうしてかというと、ひとつには、子どもといると、私の場合だけど、「まだ?」、「早く!」というようなことばかりをつい言っていて、朝起きたときから眠る寸前まで怒っていることが多いんです。
でも絵本を読んでいると、本の言葉が優しかったりするので…。

 

——:口調が変わる?

 

秋山さん:普段の言葉遣いじゃない言葉で、届けてあげられている。そうしたら私も「いいお母さんなのかな?」って錯覚を起こすし、子どもも優しく語ってもらえて、ね(笑)。

 

 

——:いくつくらいまで声に出して読んであげていたんですか?

 

秋山さん:小学校に上がってからも読んでいて、実は今も毎日ではないですけど、夜8時までに子どもたちがやることを全部済ませたら、30分間、1章から1章半くらい読んでいます。長女はほかの本を読んだり、好きなことをしているんですけど…

 

——:でも声は聞いているんですね。

 

秋山さん:次女はそばについていなくて、リカちゃん人形で遊んだりして、私は独り言のように読んでいて、聞いてるのかな?と思ったら、私よりよく覚えていて。

毎日、読まないから、前の話を覚えてるかな? って尋ねたり、私、ここ読んだっけ?って忘れているのもあって、少し前から読み始めると、「お母さん、そここの間、読んだじゃん!」って言われるから…

 

——:すごい。全部入ってるんだ!

 

秋山さん:そう、だから「子どもは聞いてるから、お母さん、独り言になっても良いから読んであげてね」とワークショップでも言ってるんです。それは実践するとわかりますね。

 

つづく・・・4回連載 第2回「2.絵本のワークショップ」は4月11日UP予定です。

2016年2月 取材
文:尾原千明
キャプション:編集A

※ 写真をクリックorタップするとキャプションとともに拡大写真がご覧いただけます。

 

秋山さんは、岡山市を中心に『絵本で子育てワークショップ』を開催されています。
詳細は、ブログやフェイスブックをご覧ください。

◆「えほんのカタチ」 http://akehon.exblog.jp/

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2.絵本のワークショップ →

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