第6回 3.暮らしぶりを教えて

2016.04.18

 

 

 

【 秋山さんは、小学校に通う2人のお子さんと旦那さまと暮らしています。お話を伺っていると、とても会話の多いご家族ということが伝わってきます。子どもたちが起きている時間はテレビはつけないのですって】

 

——:秋山さんは、どういう毎日を過ごしていらっしゃるのでしょう。

 

秋山さん:朝6時に目覚ましをかけるんですけど、6時半に起きます。それでも冬は15分間くらい、ストーブの前でじっとしたまま動けないんです(笑)。
6時45分になって、「もうやらなきゃ!」って急いで食事を作ります。長女は同じ頃に起きたり、自分で起きようと思ったら私より早く起きます。次女は7時ぴったりに、「ごはんよ!」の声で起きてきます。

 

 

 

——:そしてご主人とお子さんたちを送り出して。

 

秋山さん:それからは自由時間です。時間があったら県立図書館へ行って、大人なのに児童書コーナーへ行って。あとは本屋さんに行って絵本コーナーに座って。
子どもが小さかった頃は、本は図書館で借りたことはなくて、全部買っていたんです。動きが激しいので、ちゃんと座れるようになったら連れて行こうと思っていて、3、4歳くらいに図書館デビューしました。

 

——:本を選ぶ基準は何ですか。

 

秋山さん:まずは、絵本を読むお母さんが楽しいって思えるもの。他にも色々あるけれど、一番はそこ。
私は、最初は友だちにもらった『じゃあじゃあびりびり』(作・絵:まつい のりこ 偕成社)と外国の絵本だったんですけど、その後、何を買っていいかわからなくて、私の親から「これ可愛いし、色も濃くていいよ」って教えてもらったのがミッフィーだったんです。

 

 

 

——:色が選択基準ですか?

 

秋山さん:その頃は赤、青、黄、緑、が派手なのが良いんだろうと思っていたんです。今はそれだけじゃないことがわかっているのですが、その時は、わかってなかったんです。
しかも長女が1歳くらいになったとき、母から「下が生まれるから、寝る前に上の子に読んであげるといいよ」って言われ、じゃあ眠る前はふたりの時間にしようと決めて、買ったのがアンパンマンでした。絵本の選び方を知らないとやっぱりこれを選んじゃいます。教えなくても子どもたちはアンパンマンを好きになるんですよね。けど、この絵本の内容を私も主人も覚えるまでずっと読んでいて。これも良い思い出です。

そして、その頃から内田祐子さんの『ふわはねehon』というブログを見始め、選ぶ目も変わってきました。

 

 

 

——:お子さんが成長するに連れて、本も増えていったんですね。

 

秋山さん:どんどん増えていって、100冊くらいになったとき、主人が「まだ絵本、要るの?」って言ってきて、「そうだよね! でも子どもが成長するから、本も成長するんよ!」と言ったんです。納得したのか、言われたのは、それ一度きりですね。我が家の本が成長できるのも、主人さまさまです。

借りることもあるんですが、返さないといけない本は記憶がなくなってきて、思い出そうとするときに、すぐに取り出せないから。これ!という本はそばに置いておきたいと思っています。

 

 

 

〈本がたくさん置かれた、子どもたちの部屋に移動しました〉

 

——:本はまとめてここに置いていらっしゃるんですね。今は何冊くらいあるんですか。

 

秋山さん:夏休みに子どもが調べるって言って調べ始めたんですけど、500冊は越えていて…、またそこから増えています。ゆっくりペースにはしていますが。

 

 

秋山さん:この部屋の絵本は今、長女はあまり読まなくなって、次女が取り出して見るくらいになりました。あとは私がワークショップなんかで外に持って行くくらいです。

あ! このあいだ驚いたことがあって、『雑草のくらしーあき地の五年間』(作・絵:甲斐信枝 福音館書店)というこの絵本、長女が幼稚園のとき、大好きだったんです。

毎晩、寝る前に「これを読んで」って持って来ていた本で、ちょうど先日、講座でお母さんたちに私から、「子どもは同じ本を繰り返し持ってくるけど、読んであげてね。それが良いんだから」と話していたら、長女が「お母さん、これ毎日持って行ったら、いやそうな顔してたね」って言うんです!(笑)

 

 

——:わかってたんだ(笑)。

 

秋山さん:「読まないとは言わなかったよ!」と答えると、「でもお母さん、このへんは早口だったよ」って。すごい記憶力で。だってね、すごく文章が長いんですよ。

 

——:お母さん、見え見えだったよ、という。うん、確かにこの本は、派手な色合いでもなく、文章も少し難しそうですね。

 

秋山さん:これは作者の甲斐信枝さんという人が5年間、土地を借りて雑草を調べ上げて作った絵本なんです。何でこれが響いたのか長女に聞いたら、「草だけど、人間みたいな表現にしてあるから、それが面白かった」って言っていました。

 

 

——:お子さんの感想は面白いですね。何に惹かれるか、予想できないですね。

 

秋山さん:そのときに何に惹かれるかは聞いたことがなくて、「またこの本かー」と思って読んでいました(笑)。すごく大好きで、とにかく毎日繰り返していました。

それからそのときに次女が、この『おしいれのぼうけん』(吉田足日、田畑精一)という本、ご存知ですか?ねずみばあさんが押し入れに出て来るんです。これも毎日、次女が持って来ていたんです。だから、早口にもなるわーって。

 

——:可笑しいなあ。この本、面白そうですね。ねずみばあさんが押し入れに出て来たら、怖いじゃないですか。これは次女のともちゃんがいつ頃、好きだったんですか?

 

 

秋山さん:これは幼稚園の頃ですね。

 

——:これを毎晩、最後まで読むんですか? かなりボリュームがあると思うんですが。

 

秋山さん:1時間はかからないんですけど、頑張ってたんですよ。

 

——:これは加湿器が要りますね。喉を大切にしないと(笑)。

 

秋山さん:でもそのあとに、同じ作者の『ダンプえんちょうやっつけた』という本を毎晩読んでいたんですが、こっちは「1」と「2」に分かれているから、「今日は1ね」って。何回も読んでいったら、次女も「今日は2からでいい」とか。

 

——:子どもは本当に繰り返しが好きなんですね。

 

秋山さん:あれこれじゃなくて、しつこいほど繰り返します(笑)。

 

 

 

——:おふたりのお嬢さんの好みはまったく違うのかな。

 

秋山さん:全然違っていて、長女は結構わかりやすかったんですが、次女はこういう食べものの本なんかが好きで、この間もおにぎりの本を取り出してきて、「これお母さん、美味しそうよね、よだれが出るよね」って。

 

——:わぁ。本当だ。美味しそう。

 

秋山さん:食べもの絵本は、絵が本物なのに限るなって思います。

 

——:食べもののジャンルがあるんですね。子どもの頃って食べものへの憧れが強いから、ずっと眺めていそうだな。

 

秋山さん:次女が2歳だったかな、本屋さんで「好きな本を選んでいいよ」と言ったら選んだのがこれです。(『おいしいおと』作:三宮麻由子、絵:ふくしま あさえ 福音館書店)。

 

 

 

秋山さん:普段は私が選ぶのですが、「これが欲しい」って、良いのを選んだなと思って。
春巻きとかおひたしとか、ものを食べるときの音が文章で表現しているんですけど、聞いたところによると三宮さんは目が見えないので音に敏感で、こういう本を作られたって。

それで子どもたちに、「本当にこの音がするかどうか食べてみようや」って、「じゃあこれ作って」と言われて、初めて春巻きを作って。

 

——:お母さん、すごい!

 

秋山さん:でもあれ?私の作った春巻きは、カリッって言わないな(笑)。メニューは一緒なのに。だからあれから春巻きは作ってないんですよねー。

 

 

——:話を伺うと、本当に絵本から世界が広がっていますよね。秋山さんの今のお気に入りはどの本ですか。

 

秋山さん:何度も読んで楽しかったのは、これです。(『めっきらもっきら どおん どん』作:長谷川摂子、絵:ふりや なな 福音館書店)

カンタがひとりで遊びに行って、木の洞(うろ)で呪文を唱えるんです。「ちんぷくまんぷく」って。すると声がしてきて、何だろうって覗いたら不思議な世界に入り込んでしまう、というお話で、これが大好きなんです。

それで、一度この絵本を使って遊んでみて。お友だちをたくさん連れて、旭川に桃太郎の像があるのご存知ですか?

 

 

 

——:「水辺のももくん」?

 

秋山さん:そう! あそこに木の洞があるんです。散歩しているときに子どもが見つけて、「ここは『めっきらもっきら』じゃない?!」って呪文を唱えていたから、これはいい!と思って、絵本のここにめっきらもっきらの世界の手紙を挟む、という遊びをしたんです。

みんなで集まったときに、前もって挟んでおいた手紙をあるお母さんに見つけてもらって、『あれ?? 手紙が出て来た!!』って(笑)。手紙に書いている指令通り子どもたちが動いてね。この世界をすごく楽しんでました。

でもね、つい最近なんですが、娘がこの手紙を見て、『この字、お母さんの字に似てるよね』って。

 

——:ドキッ!

 

秋山さん:ふふふ。子どもたちは見つけるのが上手だなと思います。

 

 

——:部屋には、女の子らしいものもたくさんありますね。このロバは?

 

秋山さん:次女が誕生日にもらったものです。乗りすぎて、脚が弱ってます。私もお昼寝でちょうどいい枕になるなって、横にして使ってたから(笑)。

 

——:普段、テレビはあまり見ないんですか。

 

秋山さん:テレビは幼稚園に入ったときに、やめたんです。それから見ない生活を続けていたんですが、さすがに今くらいになると、友だちの話についていけなくて可哀想だなと思ったんです。

でも! それがなぜか話についていっているみたいで。おばあちゃんの家に行ったらテレビを見せてもらっていて、それを常に見ているかのように話しているから、いいかなと思って。でも日曜日だけはいいよ、ってちょっぴり見せています。

テレビを付けなかったら何かしらで遊ぶか、本を読んでいるから、なくても良かったな。今は夜の8時に終わって、30分本を読んで。

 

——:どんな人になるんですかね。

 

秋山さん:どんなふうになるんでしょうね。ふふふ。

 

つづく・・・4回連載 最終回「4.子どもたちと」は4月25日UP予定です。

2016年2月 取材
文:尾原千明
キャプション:編集A

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秋山さんは、岡山市を中心に『絵本で子育てワークショップ』を開催されています。
詳細は、ブログやフェイスブックをご覧ください。

◆「えほんのカタチ」 http://akehon.exblog.jp/

フェイブックは、こちらから → 「えほんのカタチ」

 

 

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