「なんだか楽しそう!」な人たちって、暮らしも楽しそう! それってつまり、〈 暮らし上手 〉だと思うんです。
そんな人たちの「たのしい」の秘訣、聞いてみたいな・・・。 よし!会いに行ってみよう!!
思い立ったが吉日、さっそく お伺いした暮らし上手さんからは、幸せのヒントが いっぱい飛び出してきました!


昨年8月に移動スーパー「とくし丸」を開業した安田尚正さん。日常の買い物に行けなくて困っている方々の家の前まで軽トラックで出向き、会話をし、商品を販売する毎日を送られています。日々の奮闘を、妄想も交えながら綴ったブログは密かなブームとか…。パートナー・尚美さんのうつわのお店「ゆくり」の庭の手入れも欠かしません。同居している猫たちのこと、45歳からの再スタートのお話など、尚美さんも一緒に、ざっくばらんにお聞きしました。(聞き手:松田祥子)

1.おばあちゃんたちのコンシェルジュです 『暮らし上手さんに会おう!第8回』

2016.10.10

 

 

 

〈築100年近くという古民家で営む、うつわの店「ゆくり」へ。玄関の扉を開けると、ガラス窓の向こうにまぶしい緑が。広い座敷にはさまざまな形の器が並べられ、ゆるりとした時間が流れていました〉

 

 

――:手入れの行き届いたお庭は尚正さんが手掛けられているんですよね。その話も聞きたいのですが、まずは移動スーパー「とくし丸」のことが気になります。詳しく教えてもらえますか?

 

尚正さん:最近はスーパーの超大型化、郊外化で近所のスーパーが撤退し、日常の買い物に不自由している方々が増えてきています。
「買い物難民(買い物困難者)」と呼ばれていて、車や自転車に乗れない方、日常の買い物が困難な高齢者の方など、社会問題にもなっているんです。

そんな買い物難民の問題を解決するため、2012年2月に徳島県で生まれたのが移動スーパー「とくし丸」です。

 

 

――:なるほど、「とくし丸」という名前は徳島県にちなんでいるんですね。

 

尚正さん:徳島からスタートしたという意味もありますが、代表取締役の住友達也さんは社会貢献をする「篤志家」からの「篤志丸」=「とくし丸」といった想いも込められていらっしゃるようです。

「とくし丸」は8月現在、全国36都府県に拡がっています。

 

――:安田さんは昨年8月に個人事業主として移動スーパー「とくし丸」を開業されたんですね。

 

尚正さん:はい。以前はシステムエンジニアとして働いていたんですが、転職しました。

「とくし丸」の仕組みはとてもユニークなんです。

「とくし丸」本部・地元提携スーパー・個人事業主の三者が協力関係を持ちつつ地域を巡回しています。商品は地元の提携スーパーから提供してもらい、個人事業主である販売員が冷蔵庫付きの軽トラックで代行販売します。

スーパーは売れ残った商品の返品に応じなければなりませんが、店舗の費用や人件費は必要ありません。
岡山県の場合は、提携スーパーは天満屋ストアです。個人事業主は天満屋ストアと契約を結ぶことで、在庫を抱えるリスクがなくなり、常に新鮮な食材をお届けすることができるんです。

自由に商品を持ち出して自由に返せるということ。その「返せる」ということがすごいんですよ。

 

 

――:そうなんですか?

 

尚正さん:個人事業主だけでやっていたら、全部仕入れて、さばかなければなりません。古くなったら廃棄か値切りか。特に廃棄する場合は損失になるから大変です。

「とくし丸」の場合は、そういったリスク・コストが分散されるわけですね。

 

――:扱う品目はどれくらいですか?

 

尚正さん:新鮮なお刺身、総菜、お肉、野菜、果物からパン、お菓子、かさばるトイレットペーパーやティッシュなどの日用品まで、積んで走っている点数は約1200~1300点でしょうか。
レトルトなど日持ちのする商品800点は常に積み込んだままになっているので、約500点の生鮮食品は毎朝積み込んでいます。

 

――:500点も! 積み込むのに時間がかかりそう。

 

尚正さん:僕の場合は6時半くらいからはじめて10時出発ですから、3時間半かけて朝の積み込みをやっていますね。岡山のメンバーの中でも時間をかけている方だと思います。
店の状況、条件によっても左右されるところはあるんですけど、開業当時は本当に店の中を走り回っている状態でした。今は、歩く程度ですかね。

 

 

――:なるほど。「とくし丸」にはほかにどんな仕組みがありますか?

 

尚正さん:300mルールというのがあります。スーパーや個人商店から半径300mをお年寄りが歩いて往復できるギリギリと考え、その半径300m以内では顧客の開拓はしません。あとは、

・お客様に関しては、会員登録や会費など一切かかりません。

・お客様には、お店までの往復の交通費としてすべての商品に10円を加算してもらっています。

・「とくし丸」の歌があって、その歌を流すと皆さん出てきてくださることになっています。

・買い物だけにとどまらず、「とくし丸」の販売員が地域の「見守り隊」としての役目を果たすことも目指しています。

ということでしょうかね。

 

 

 

――:今、岡山県では「とくし丸」がどれくらい走っているのでしょう?

 

尚正さん:岡山は15号まで出ていますね。そのうち1つ欠番があるのかな。

 

――:安田さんが巡回しているエリアは?

 

尚正さん:岡山市北区足守周辺から総社市東部です。吉備中央町よりは手前、岡山空港の北くらいまででしょうか。母体は天満屋ハピータウンリブ総社店です。

 

――:行くコースは自分で選べるんですか?

 

尚正さん:最初にそのエリアでお客様の開拓をするんです。自分達の足で地域をまわり、買い物に困っていて、「とくし丸」を必要としてくださるお客様を確認し、一通り出そろったらコースを決めていきます。
基本はお客様の元に週2回。月木、火金、といったパターンが多いでしょうか。
僕の場合は、月曜だけ、木曜だけ、金曜だけというところもあります。

 

 

――:やはり、利用者は山間部で買い物に行くのが不便な方が多いのですか。

 

尚正さん:そうですね。ただ、便利だと感じる街中でも坂道や交通手段がなくて困っている方々も多くいらっしゃいます。

山間かどうかというよりは、その人が車を運転できるのかどうか、身内の送迎や送迎サービスといったものも昔よりは充実してきていると思いますが、気を遣ってしまうし、時間をあわせるのにちょっと不便を感じてしまうといった事情もあります。

交通手段がない方は本格的に困られているので、買い方も違いますね。買い物にはほとんど出てなくて、「とくし丸」だけで購入される方もいらっしゃいます。

 

 

――:販売時間は?

 

尚正さん:一軒、約5分ぐらいでしょうか。

 

――:早いですね!

 

尚正さん:僕も最初はそんな時間で買えるのかなと思ってたんですけど、慣れてきたらね、お客様も何がどこにあるか分かってくるし、買うものも決まってくるし、ぽんぽんぽんと買うから5分でいけるんですよ。

 

――:ほぉー。その数字はデータの蓄積から生まれてるんでしょうね。

 

尚正さん:それで、一日に出向く数が27~30くらいかな。

 

――:へえ~、そんなに。

 

尚正さん:ちゃっちゃか、ちゃっちゃか。のどかな感じではないですね。
次から次へ、一秒でも早く。
しまうのもパパパパーンと早くしまって、さっと乗って、ぱっと出て(笑)。
少しでも早く回れば1軒でも多くまわれます。1軒増えただけでも違いますからね。

 

――:求められているところにいくから、みなさん喜ばれるでしょう。

 

尚正さん:はい。毎回ありがとうと言ってくださる方もいて、本当に嬉しいことです。

 

 

 

――:この地域だと必ず売れるというものはありますか?

 

尚正さん:売れる、売れないというのも、たまたま好きなお客さんがいるかどうか、好みの問題ですかね。

あぁ、ピーナツ豆腐はなぜか総社方面で売れますね。岡山方面ではあまり出ませんが。昔から流通していたエリアは馴染みがあるのかな。

地域性といったら地場の豆腐屋のあの豆腐がいい、とかね。そういうのはありますが、ほかはあまり感じませんね。

 

――:山間部に行ったら顕著にそれが出るのかなと思っていました。あ、野菜を育てている地域は、野菜は売れない?

 

尚正さん:野菜は作るものですからね、売れないです。もらうばっかり。そう、売れるのは種ばっかり。

 

 

――:(爆笑)。 お客様の年齢層は?

 

尚正さん:平均したら70代後半か80代でしょうか。若い人はごくまれ。一番若い方は20代。
あとは30代、子育て中の方、その上は40代かな。90代の方が3人くらいいらっしゃいます。

わりと最近始まった方で、そのおばあちゃんも90代。いつもの時間にいないなと思ったら、軽トラが近づいてきたんです。運転していたのがそのおばあちゃんで。

 

――:運転していた?

 

尚正さん:農作業が終わって車でかけつけてくれたんです。チャキチャキしてお元気そうで、90代でもバリバリ軽トラ乗って仕事していました。

 

――:かっこいいですね!

 

尚美さん:私は「とくし丸」に1回だけ同乗したことがあるんですけど、おしゃれなおばあちゃんのことを教えてくれました。嬉しそうに。
どこに行っても、おばあちゃんたちにはすごく優しいんですよ。声が違うの(笑)。

 

――:そういえば、「とくし丸」の最終目標は、「おばあちゃんたちのコンセルジュです」というフレーズがありましたね。

 

 

つづく・・・4回連載 第2回「2.水と庭と猫たちと」は10月17日UP予定です。

2016年8月 取材
文:松田祥子
キャプション:編集A

※ 写真をクリックorタップするとキャプションとともに拡大写真がご覧いただけます。

 

安田さんのブログ  「とくし丸日記」
~安田さん独特のスパイスを効かせた親近感が魅力です。
http://yukuriotto.blog.fc2.com/

 

移動スーパーとくし丸 webサイト
http://www.tokushimaru.jp/

 

天満屋ストアとくし丸 webサイト
http://www.tenmaya-store.co.jp/tokushimaru/

 

ゆくり http://www.yukuri-utsuwa.net/
岡山市北区撫川173-1/TEL 086-292-5882
営業時間 木・金・日曜11:00~16:00

 

 

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