クレル後楽園のこと、土岐さんと宮井さんに聞きました。(後編)

2016.03.25

 

 

岡山市中区浜にできたタウンハウス賃貸住宅「クレル後楽園」。
後楽園に近く、自転車で中心部へ出かけられる利便性のよい街にあります。
ひときわ目立つ建物ですが、威圧感はなく、街に寄り添う穏やかさが印象的です

設計・監理は、有限会社土岐建築デザイン事務所。
2月には完成見学会も開催されました。

この、不動産屋さんと設計事務所の共同プロジェクトである「クレル後楽園」について、
詳しく知りたいと思った私たちは、見学会準備中に現地を訪れ、
建て主の菱善地所有限会社 専務・宮井さんと
建築家・土岐さんのお二人に、
設計事務所に依頼した意図や建物の特徴などお伺いしてきました。

 

 

お話をしてくださったのは、このお二人。

 

”どうしよう”に応えたい不動産屋さん

菱善地所(りょうぜんじしょ)有限会社
専務・宮井宏さん
※2016年6月21日より宮井宏さんは代表取締役に就任されました

 

有限会社 土岐建築デザイン事務所
代表取締役・土岐一嘉さん

 

 

4.設計事務所に任せるということ

 

ーー: 設計事務所に依頼して進めてきてなにか感じたことはありますか?

 

宮井: もう、とにかくお任せできることです。
ウチの井澤君とやりとりしながら進めてもらいましたが、確認することはきっちりしているし、細かいことも安心してお任せ出来たんで、おそらくスムーズだったんじゃないかと思います。

初めての住宅の建設に設計事務所へ依頼したという場合は、何が良いか分かりにくいと思うんですけど、全然違いましたねぇ。

 

ーー: 新築賃貸物件を建てた経験があるんですよね。それとはやっぱり違ってました?

 

宮井: ちがいます、全然。
プランの細かい点って、全部自分たちで決めなきゃいけないんですが、そこをある程度安心してお任せ出来ることとか。
あと、最後の納まりですよねぇ。

 

 

ーー: 納まり?

 

宮井: 例えば階段の所のFIXのガラスの嵌め方も、普通は、周りに桟つけて、そこへパカッとガラスを当てて反対から木で押さえて、縁が出来ますよね。賃貸物件でよくあるんですが。

それが縁なしにすっきりしたものにできる。工務店さんや大工さんに、図面で施工出来るよう伝えていただけてるんですよね。

 

ーー: 伝えておかないと…、

 

宮井: そう。出来ない。
面倒な作業だと思うんですよ、クロスもシビアに貼らないといけないんでクロス屋さんも嫌でしょうし。それをまとめてくださる。

 

土岐: こういうアパートって結構難しくて。
同じ部屋、仕上げをつくらないといけないんです。まったく同じものを複数。

 

宮井: 一番忙しい時、大工さん8人入ってくださったんですよ。各部屋に1人。
だってそれぞれ一棟建てるのと一緒の作業ですから。

 

ーー: 同じものをつくるっていうのは、そんなに難しいんですか?

 

土岐: 難しいですね。
同じ人間が同じものをつくるわけじゃないんです。
同じ1人の大工が1軒つくるんだったら、それは出来るんです。
大工が8人いるなら、8人とも同じものをつくらないといけないんです。

 

宮井: 現場の監理って大変なんですよ。
図面で描けない細かい部分も一杯あるんで、そこを担当の原田さんが、違いますって伝えて直して貰うとかね。

もちろん施工していただいたあらい建設さんにも感謝しています。施工する方に指示するのはやっぱり現場監督さんですから。

あらい建設さんは土岐さんにご提案いただいたのですが、何度も一緒に現場を持たれていて、意思の疎通もスムーズなのではないかと思い、今回は相見積もりをとらずに特命でお願いしました。

あと、設計事務所さんに入っていただくと、見積額が妥当なのか見てもらえるので、そういう意味での安心感もありますね。一般の方には特にそうだろうと思います。

 

 

ーー: なるほど。土岐さんは難しかった点とかあります?

 

土岐: 僕は、所員に任した後は報告を受ける立場で。
ディテール部分でちょっとおかしい部分があったらどうする、って話は毎週の会議で、どこが完成して、どこが難しいとか、報告は受けてるんですけど。

重要なのは、色々な検査でここはダメっていう所をやり直すところです。そこで直す箇所が見えるか見えないかで出来栄えが左右される。その検査ですね。

例えばキッチン脇の格子の納まりでも、まぁ、普通鉄と木ってなかなか難しいんですよ。
これは、一つ一つ溶接した鉄を木に嵌め込んでこっちからねじを入れてるんです。
格子の間隔の見せ方や、等間隔の割合とかも考えて。

もう、ちょっとしたことなんですよね。
その辺が出来栄えに出ます。

 

ーー: シンプルなデザインも深く考えられてるんですね…。

 

 

土岐: あと、タイルなども施工で絶対に切らないんです。
切っちゃうとどれだけ不細工になるか。

キッチンのコンセントも、センターに来てないとダメっていうね。目地のセンターか、タイルのセンターか、どっちのラインで追うかみたいな。

 

宮井: その辺の細かいことがね、僕も気になる方なんで(笑)。

 

ーー: 気が合ったわけですね(笑)。

 

土岐: ラインとか、結構僕は気にしちゃうんで。
気にするっていうか、一番ですかね。

図面に起こす時点でディテールが描けているかどうかなんだよね、詳細部分がね。
それはもう、どんな建築でも一緒。コンクリートでも鉄でも木造でも。

逆に言ったら、木造が絶対一番難しいですね。なおかつ、こう鉄骨が入ると余計ね。

 

 

ーー: ほう、そうか。
鉄骨も入ってるんですね、木造だけど。

 

土岐: 構造上、要るんです。木でも良かったんですよ。壁でも。
ただ、奥さんがキッチンに居たらリビングとの間が壁で仕切られるよりは、ね。話も聞こえるしね。

この格子の部分、最初はこれ、ガラスも考えたんですが危険性も考慮すると…、だけどアクリルだと余りにも味気ない。で、格子がいいかなって。キッチンは明かるさを取りたかったのでね。

20代後半、または30代の人が住みたいなっていう家をイメージしたんです。
子供が小さくても遊べるっていう。それに、20後半~30代のお母さんやお父さんが、ここで愉しんで暮らすのがイメージ出来たから。

 

ーー: なるほど。

 

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5.設計の特徴

 

土岐: 見学会用だけど、家具が入ると違うな。

 

ーー: 違いますねぇ。凄くいいですね。
つくり手、土岐さんが気にしてこだわったっていうものがあれば教えていただけますか。

 

土岐: やっぱり入居して貰わないといけないんで、一般的なアパートはつくりたくなかったんです。それを宮井さんが認めてくれたっていうことが大きいんですが。

ランドマークのような感じに、パッと目立つ分かるような建築にはしたかったですね。

 

 

土岐: 建具とか、そういったことはできたら木でいかせて欲しいというのは、はじめから言ってたんです。
最初の全て無垢材でという案は出来ませんでしたが、それでも全体のイメージは変わらず出来ました。

 

ーー: 確かに、形は目を引きますね。だけど2棟とも自然に馴染んでるというか。

 

土岐: 最初土地を見たときに、2棟を同じ外観デザインにはしたくなかったんです。
それから建物をずらすっていう一つの案が生まれて、で、このアンバランスな建物をメインにしました。

形の違う建物が並ぶことでメリハリが利くんです。

ずらすことによってプライバシーも保たれるんですよ。隣の庭があまり見えないとかね。

もし2棟が同じものだったらこれはちょっとツマラナイ…。
A棟の各戸の並びをずらして、B棟の各戸はまっすぐつなぐ。
A棟からB棟を見ても、またその反対でも、それぞれの形の違いが相乗効果で活きるんです。

 

 

ーー: なるほど

 

宮井: そう、だから予算の都合でこのウッドデッキも板塀も無かったんですけど、やっぱり建物が出来たのを見たらダメだと思って、つくったんですよ。

 

ーー: 後から追加で?

 

宮井: 最初の計画には入ってたんですけどね、僕が削っちゃったんです。
だけど、要るもんだったな、って思って。

最初敷地全体を板塀で囲いたかったんです。
メンテナンス性と、コストがとんでもなかったんで周囲はPCフェンス(ネットフェンス)にして、家の塀だけは、と。

 

ーー: へぇ。

 

宮井: やっぱり雰囲気がいいと思うんで。

 

 

 

6.時とともに味わいの増す物件

 

ーー: お住まいになられる方に、こういう風に住んでいただきたいとか、望みはありますか?

 

宮井: 賃貸だからってプランターとかにせず、そのまま庭に植えてもらってもいいなって思ってるんですけどね。

 

土岐: 野菜とか作っても良いんですか?

 

宮井: もちろん!

 

ーー: へえ!

 

 

宮井: 植栽とか、管理コストを減らすためなら、なるべく共用のものを作らないのがベターなんでしょうけどね。

でもやっぱり、住んでみたいと思うような感じにしないと。継続的に入居していただくのが大事なんで。

古くなったら終わり、価値が下がってしまうという物件が多いわけですよ、昨今。だから、むしろこう、時間が経つほど良い物件になっていくようなものにしたかったんで。

 

土岐: そういう建築には、やっぱり住みたいっていう人も多いですね。東京でも有名な建築のものとかありますね。

 

宮井: 良い味があるから住みたい、と言われる物件に育っていって欲しいんです。
入居者の方には、そうやって一緒に育ててもらえるといいですね。

まぁ、一時的な住まいになるでしょうけど、借住まいだから我慢するんじゃなく、ここでの暮らしは良かったわ、みたいに思ってくれれば良いな、って。

 

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※ 植栽の施工・UZU DESIGNの内海さんと。

 

 

7.住む、「質」。

 

ーー: 土岐さんとしては、望みは?宮井さんと一緒ですか?

 

土岐: 基本的に変わらないですよね。今回は、菱善地所さんとのヒアリングと、つくるものが、変わらなかったですから。

こういった物件は、コンペみたいな考え方で、「こういうイメージで、こういう感じに暮らす」という仮定のもと、つくるんです。実際に住む人に聞けるわけじゃないんでね。

だけど、やっぱり、イメージしたような人が来るんじゃないかなって思うよね。
わかる人が住まれるのかなっていうのがまぁ、予想が付くよね。住まい方が上手いっていうか、お洒落な人が来ると確信してるんですけどね。

 

 

ーー: ほう!

 

土岐: 住む、「質」。
20年30年住んだ家でも綺麗にきちんと、センスいいなっていう住まい方をされている方いますよね。

賃貸でもそういう方はいらっしゃるからね。模様替えをしてみたり、自分で好きなものを買ってみたり。
そういう質の良い住まい方の人が住んでくれるってね。

 

宮井: そういう人なら、庭もある程度良い様に使ってくれるんじゃないかなって思うんです。そんな住まい方をしてくれる人を、ここなら呼べるかなぁ、と。

 

ーー: 綺麗に住まわれてたら、周りに住む人も気持ちいいですもんね。

 

土岐: そういう方が集まれば、全体が整うわけなんですよね。

 

ーー: ああ、全体が整う!確かに。
そうか…、住む「質」ですか。

 

土岐: そんな方達に住んでいただけたら嬉しいですよねぇ。

 

宮井: 説明なしでは気づかないような工夫も、細部まで配慮されているということは何となく伝わると思うんです。
そういう方達なら、気づいて、大切に丁寧に住んでいただけると思うんですよ。

 

 

ーー: その人らしく、整えた住まい方をすると、いつも明るく愉しく暮らすことができそうですね。

 

土岐: アパートって部屋が決まってるでしょ。
そうしたら、家具とかインテリア、小物、雑貨、そういったもので愉しむんですよ。

 

ーー: なるほど!

 

土岐: だからあまり空間もごちゃごちゃしないほうが良いと思うんです。好きなものを集めて住むっていう。

 

宮井: ちゃんと自分でものを選んで、暮らし方を持ってる人だったら、建物は、逆に何もしてないほうがやり易いと思うんです。
この「クレル後楽園」もそんなイメージからできました。

 

ーー: 良いですねぇ、入居されるのがたのしみですね!

 

宮井: そうですね。

 

ーー: 今日は、貴重なご意見、お話を聞かせていただきましてありがとうございました。

 

 

 

2016年2月25日 取材

→ クレル後楽園のこと、土岐さんと宮井さんに聞きました。(前編)

 

 

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「クレル後楽園」
タウンハウス賃貸住宅
岡山市中区浜3丁目5-7-3
構造/木造2階建て
戸数/8戸
備考/ウォシュレット・エアコン・ガスコンロ・テレビドアホン・専用テラス・庭・ベランダ・屋外物置付き

~お問い合わせ~
菱善地所有限会社
Tel 086-225-0090
〒700-0816 岡山市北区富田町1-1-10 2F
営業時間 9:00~18:00
http://ryozen-jisho.com/

 

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