第1回 2.ごはんのたのしみ。

2014.12.08

 

 

――:お料理がおいしすぎて取材を忘れています(笑)。
どれもほんとにおいしくて、ちょっとしゃれてて、
この味どうやって作るんだろうってレシピを知りたくなるものばかり。
料理は誰かに習ってるんですか?

 

千田:うーん、特に本格的に習ったってことはないんですけど。
前職で料理番組の担当をしていて、岡山国際ホテルのシェフとお仕事をする
うちに自然と覚えたことがベースになっているかもしれないですね。
他にも、周りにいる料理上手な人たちからいろんなヒントをもらっている気がします。
でもほんとに思い付きで適当に作ることも多いんですよー。

 

松井:チャレンジしすぎて、たまに「?」っていうのもあるよね(笑)。

 

 

千田:それ言わない(笑)。
…私、米沢亜衣さん(現・細川亜衣さん/料理家)の料理がすっごく好きで。
さっきの豚のカリフラワー煮も米沢さんのレシピなんです。
あんまり素材をいじくらないで、シンプルなんですけど、
でも作ってみるとびっくりするぐらいおいしいの。

 

――:料理でも、「この人の料理が好き」っていうのがあるんですね。音楽や小説みたいに。

 

千田:これ、米沢さんの料理の本なんですけど、
分量も手順もほんのちょっと、ざっくりしか書いてないでしょ。
その代わり「これがこういう状態になったタイミングでこれを入れる」とか、
本当に大事なポイントだけ、感覚でわかるように書いてある。
そういう、なにが大事で、なにを省くかっていうところがはっきりしていて、
素敵だなあと思います。

 

 

――:手順説明の写真とかもなくて、料理本ぽくないですよね。

 

千田:合間合間にちょっとしたエッセイ的な文章が差し込まれてるんですけど、
これがまたいいんですよね!
言葉の端々に米沢さん自身の生きる姿勢のようなものが見えて、
それが料理にも通じているように感じます。

 

――:作品の中に作り手の人間性が垣間見えると、ハッと感動させられますよね。
料理も同じなんですね。

 

 

――:とはいえ、食事の支度も毎日のこととなると、おっくうに感じることとかありませんか?
私なんかしょっちゅう、あーめんどくさい!ってなっちゃうので。

 

千田:そりゃありますよ!
出かけて帰って、もうなにもしたくなーいっていう日もあるし、
だいたい個展の前になったらとてもまともな夕食なんて作ってられないし。
そういうときはお弁当を買ってきて済ませたり、
ここぞとばかりに前から行きたかった焼肉屋さんに食べに行ったり。
ぜんぜん無理しません。

 

 

――:そうなんですね!安心しました(笑)。

 

松井:ずっとカレーとかね。
僕カレー大好きだから、それはそれで楽しみっていう(笑)。
カレー作るときは、僕もちょっとはキッチンに立つんですよ。
大鍋いっぱいのタマネギを1時間ぐらい、ひたすらぐるぐる混ぜて炒め続ける係。

 

 

千田:桃のスープ作ってみたんだけど、どう?

 

――:わあ!桃のスープなんて、高級ディナーコースの中の1品みたい。感動です!

 

千田:でしょう!?
でもほんとは、家にいっぱいある安いキズ桃に、ちょっと手を加えればできちゃう。

 

――:ちょっと手を加える… 簡単そうで、これがなかなか難しいんですよねえ…。
ひと手間かけても自分で作ろうって思う、原動力みたいなものってなにかありますか?

 

 

千田:そうですねー。
うちで手をかけて作るのと、買って手に入れるのと
天秤にかけてどうかってことが基準なんですよ。
いい素材を使って丁寧に作られたものって、お値段は少々高いけど、
納得できるおいしさですよね。
でもそれを日常的に買って食べるのはちょっと贅沢かな、と思うじゃない。
そういうときに、「じゃ自分で作ればいい!」って、ガーッとエンジンがかかります。

 

――:なるほど!きちんとした手づくりのものって、買うと値段もそれなりですから、自分で作る価値は高いですよね。

 

千田:この前はお店でおいしそうなはっさく大福を見つけて、
思わずカゴに入れそうになりながらも、頭の中で即計算(笑)。
「これだったら自分で作れば…これぐらいの材料費で、しかもいっぱいできて
みんなで食べられる!」って。
大体の場合そういうことになるから、ついつい自分でせっせと作っちゃうんですよねえ。

 

 

――:丁寧に作られたおいしいものを食べたいという気持ちに、コストパフォーマンス的な視点が加わって、「自分で作る」という選択肢に行き着くのかもしれませんね。

 

千田:そうですね。
こんな桃のスープとかまさに、家で作るとすごくコスパが高いもののひとつ。
人に出したら「すごい~!」って言われてフッフッフ(笑)。
だから、すべて手づくりにこだわってるとか、なにからなにまで無添加じゃないとダメとかじゃ全然ないんです。
もちろん身体にやさしい素材や調味料を使うことを心がけてはいるけれど、
たまにはカップ麺だって食べちゃう。

 

松井:餃子の王将なんかも僕は好きなんだけど、あれだってある意味、
買う価値はあると言えるよね~。
同じものを同じ値段で自分で作れるかというと無理だもの。

 

 

――:なるほど~。

 

千田:私自身が、なにかを作り出すことが好きで、
料理を作ったり、やきものを作ったりしているから。
だからこそ全部自分の手づくりがいいというわけじゃなくて、
作った人の心意気が伝わってくるものだったり、自分では到底できないと
感じるものに対しては、買う喜びというのもすごく大きいんです。

 

――:ああ、よくわかりました!
自分で作ること、買うこと。どちらも大切に考えてきちんと選ぶ姿勢…。
お手本にしたいですね!!

 

 つづく ・・・5回連載 第3回「 3.うつわのたのしみ。」は12月15日UP予定です。

 2014年8月 取材
文:吉田愛紀子
キャプション:編集A

※ 写真をクリックorタップするとキャプションとともに拡大写真がご覧いただけます。

 

陶工房ゆうらぼ

千田稚子さん、三宅史家さんの女性ふたりで開くやきもの 工房。
個々に制作・発表の活動を行いながら、 陶芸教室、 ゆうらぼとしての器展を共同で開いています。
岡山市中区藤崎497-3  tel.086-277-8076
http://ww61.tiki.ne.jp/~yu-lab/

 

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