椅子のこと調べてみよう 11

2020.07.24

緊急事態宣言解除が全国で解除され、数ケ月ぶりに行った外食。
足を運んだのは大好きなカレーショップ。

新型コロナウイルス感染症対策で、カウンター席は密着しないよう適度なスペースが空いていました。
店内に並んでいた椅子の数は、以前の半分に。でも、いつもの椅子に座ることができました。

私の「いつもの椅子」とは、カウンター席の一番奥にある椅子のことで、順番待ちのときにも、なぜか偶然この椅子に座ることが多いのでした。

その椅子の名は「.03(ゼロスリー)」(1998年)といいます。

 

 

「.03(ゼロスリー)」

 

 

 

ベルギーのデザイナー、マールテン・ヴァン・セーヴェレンによって、1998年にデザインされた椅子です。
1998年というと、この世に出て22年。なんと平成生まれ!
昭和生まれの私にとっては、まだまだ新しい椅子という感覚です。

 

 

ペンでさらっと描ける形

 

見た目は超シンプル!

横から見ると分かるのですが、直線が背もたれからから座面にかけて、そして脚へと流れるようにつながっています。


ほら、ペンでさらっと書けちゃうくらい単純な、無駄のないフォルム。
シンプルだけど絶妙なバランスで細かく設計されているのだろうなぁ。

座面と背もたれが一体化している椅子は何度か目にしたことがありますが、脚までがきれいにつながっているなんて…
昔では考えられない、素材や技術が進歩した「現代の椅子」という感じ。

ちなみに後ろ脚はこんな感じです。

 

 

見た目とのギャップ

 

この椅子、一見すると薄いプラスティックと金属を組み合わせただけ?
と、硬くて冷たいイメージを抱いてしまいますが、実はソフトな奴(!)なのです。

硬そうに見えるシート部分は素材にポリウレタンを使用していて、弾力性があるので柔らかい。
しかも、バネが内蔵されているので、座る人の体に合わせて心地よくフィット。
細身のフォルムですが、身体を優しくサポートしてくれるのでした。

 

 

数字を追いかけてみる…

 

名前の「.03(ゼロスリー)」について、
3という数字がついているからには、ほかの数字の椅子もあるのかしら?
不思議に思っていたら、カレーショップの店長に「.02(ゼロツー)」の存在を教えてもらいました。

1992年に設計された.02は、フォルムは.03とほぼ同じ。
素材がアルミのみで造られていたとか。工房で何度も試作を重ね、快適な座り心地を可能にしたポリウレタンを座面に採用したことでようやく完成したのが.03だということです。

その後、キャスター仕様の「.04(ゼロフォー)」や、カンチレバー構造の「.05(ゼロファイブ)」、.05をラウンジ仕様にした「.06(ゼロシックス)」が発表されています。

 

 

同じ時代を生きたデザイナーの名作

 

さて、椅子をデザインしたマールテン・ヴァン・セーヴェレンのこと。
1956年、ベルギー・アントワープに生まれ、ヘントのアートスクールで建築を学びました。
1986年から自分の工房で家具や椅子を製作。素材はスチールやアルミ、合板、ポリエステルなど多岐に渡ったそうです。

オランダの建築家、レム・コールハース設計の「ボルドーの家」(1998年)のインテリアを担当したことでも有名です。
1996年からはスイスの家具ブランド「Vitra(ヴィトラ)」とのコラボレーションが始まり、作品を広く世に出していきました。そして、2005年に49歳の若さでこの世を去っています。

セーヴェレンは今まで調べてきた椅子職人、デザイナーの中でも一番年齢が近い人でした。
もし生きていたなら、今年64歳。現役でバリバリ仕事しているとき…!
どんな名作を生み出していたのだろうかと考えると残念でなりません。

 

 

おまけ「久しぶりの半々(チキン+ダル)、ゆでたまごのスパイス揚げ付き」

 

季節の変わり目に無性に食べたくなるのです。

 

 

【参考文献】

西川栄明(2015)『増補改訂 名作椅子の由来図典』誠文堂新光社

 

 

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