4 建築家のしごと6~ぶらぶら会場を巡ろう
2019.06.04
巡る人:ライター 松田祥子 & 編集 家戸美衣子
手を動かして考える 【加計美術館】
加計美術館に到着しました。
「宮脇檀・手が考える」ドローイング展(巡回展)の会場です。
松田「これ、みんな手描きですか?」
平野「そうです。これは宮脇さんの旅行の時のスケッチですね」
松田「すごい! 細かいところまで描いてあって情景がありありと浮かんできますね」
平野「宮脇さんは才能ある方で、住宅建築のトップランナーとして活躍されているほかに、エッセイストやテレビのキャスターもされていました。
今回の巡回展では手で書いた美しい設計図(実物)を数十点展示しているほか、
デザイン・サーベイとして最初に手がけた倉敷の町並み調査(1966年)の原図を加えて展示しています」
松田「デザイン・サーベイというのは?」
平野「都市空間や建築空間の実地調査のことですね」
松田「最初に手がけたのが倉敷だったなんて、ご縁がありますね」
家戸「そのときにまとめられた図面、こまかい…」
平野「倉敷に2回訪れて調査されたそうです。
ユニークなのは白壁の建物、土蔵の建物が占めている割合、あとは道を通ってみてどこまで視界が通っているか、
などをデータで残すのではなく図で残していること。その視点や表現が実に興味深いです」
家戸「それにしても絵がきれい!」
平野「そう、絵が上手なので、定規を使って描かれているのもあるんですが、フリーハンドで描かれているものもあるんですよ。
ものを創るというのは手を動かして考えるという感覚が僕らにはあるんですが、
若い学生さんにもこの手描きの習練から刺激を受けてほしいですね」
家戸「これは?」
平野「手術して声が出なくなったので、筆談で仕事の打ち合わせをされているメモですね」
家戸「『建築だろ』と書いてある」
松田「すごくリアルな、生身の感覚が伝わってきますね」
つづく