第2回 『住まいの思考図鑑』
佐川旭 著 / エクスナレッジ 刊
「こんな家に住みたい!」
明確な理想の姿を、あなたはすぐに思い浮かべられますか?
そもそも理想の家とは、何でしょう。
それは外観? 間取り? それとも立地のこと?
いつかどこかで見た雑誌に載っていた、憧れの家?
子ども部屋って、いる? いらない?
夫婦の間で、意見も好みも一致する?
果たして、理想の家とは、いったい何を考えなくてはいけないのでしょう。
途方にくれそうになったら、ぜひ本書のご一読を。
『住まいの思考図鑑』は、住まいづくりを考えるひとへの1000本ノック。
1000本という数字に、一瞬たじろぐかもしれませんが、
実際に家を建てようとすると、
完成までに設計者からおびただしい数の質問を受け、
(その数700とも800とも言われています)
そのひとつひとつを考え、選択することになるのです。
住まいづくりとは、つまり、思考の連続作業。
この本は、家づくりに向けての、いわば「脳トレ」。
気軽にページを繰ってみてください。
たとえば、こんな設問があります。
子どもの頃、好きだった場所は?
大人になって居心地が悪かった空間は?
くつろぐ時間に何をしたい?
新居にどうしても置きたい家具は?
自分への問いかけ。
読み進めるうちに、気候風土や素材のこと、
日本の住文化が育んできた、長く住み継ぐ知恵や工夫を教わるばかりか、
リビング、キッチン、収納といった個別の項目を考えるうちに、
自分の暮らしを見つめ直していることに、気が付きます。
ユーモアあふれるイラスト満載。
こんなに愉しい1000本ノック、滅多に受けられるものではありません。
「家づくりは、自分の人生に対していくつもの質問状を受け取ること」
と、著者は言います。
「どんな家に住みたいか?」を考えることは、つまり、
「自分はどう生きたいか?」に想いを巡らすことでもあるのです。
選書・文 スロウな本屋 小倉みゆき
スロウな本屋
「ゆっくりを愉しむ」をコンセプトに、店主が選んだ絵本と暮らしの本が揃う小さな新刊書店です。
戦前から残る木造長屋をリノベーションした店内では、毎月多彩なワークショップを開催しています。
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