第15回 『おおきな きが ほしい』
さとうさとる 文/むらかみつとむ 絵/偕成社 刊
「ぼく、おおきな木がほしいなあ」 かおるの頭の中には、一本の木があります。家族4人でようやく抱えられるほどの、大きな大きな木。はしごを何本も使って、木の幹に開いたほら穴を通って、上へ上へと登っていくと、小さな小屋があって・・・!?
少年の想像の中にある木は、とても魅力的です。「ぼくの小屋」の中には、隅っこに台所があります。水も出るし、コンロもあります。小屋の真ん中には、テーブルと椅子がひとつ。かおるはここで、得意なホットケーキを焼いたり食べたりします。ホットケーキが焦げても大丈夫。ちゃんと煙突もつけてあります。
さらに上へと木を登っていくと、りすの親子の家があったり、カケスやヤマガラもやってくる見晴らし台があったり。そこからの眺めは、さぞかしよさそうです。
小屋の暮らしは、どうでしょう? 夏にはセミが小屋の中にやってくるかもしれません。秋には落ち葉が舞い込むかな。冬になって雪が降る頃には、ストーブをつけなくては。そしてまた春がきたら・・・。春夏秋冬、季節の移ろいと共に、小屋の表情が変わるのも、見ていて飽きません。
小屋、秘密基地。子どもにとって、いや大人にとっても、どうしてこんなにワクワクする存在なのでしょう。大きな木の上に、自分だったらどんな小屋をつくる? 木の上で、何をしたい? 想像力をかきたてる絵本で、理想の小屋を考えてみるのは、とても愉しい時間です。それはもしかすると、未来の自分の暮らしに向けて、善きイメージトレーニングになるかもしれません。
選書・文 スロウな本屋 小倉みゆき
『おおきな きが ほしい』 オンラインショップページ
https://slowbooks.securesite.jp/shop/products/detail.php?product_id=405
スロウな本屋
「ゆっくりを愉しむ」をコンセプトに、店主が選んだ絵本と暮らしの本が揃う小さな新刊書店です。戦前から残る木造長屋をリノベーションした店内では、毎月多彩なワークショップを開催しています。
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