第23回 『縁側のある家と暮らし』
エクスナレッジ 刊
家のふちに在り、外と中、人と人とをゆるやかにつなぐ場所「縁側」。日本家屋にだけにあるようなイメージですが、存外「縁側」にあたる場所は、たくさんあるようです。
料理家、金継師、スタイリスト、建築家、セラピスト。海の見える場所、急斜面の丘の上、竹林のそば。住む人も、住まう場所もさまざまな12の家族に見る、縁側のある暮らしを追う本書。縁側がどれだけ魅力的なスペースであるか、ごく一部ですが、それぞれの暮らしからつむぎ出される実感伴うことばの数々をご紹介します。
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庭がくれる季節の行事で日々が快く埋まっていく。「木の剪定、枇杷の収穫、もう少しで梅もなるから準備をしておこう、という感じで」。収穫の後の作業は縁側でする。枇杷は種を集めて焼酎漬けに。梅は塩漬けにした後ざるに広げて天日干し。梅を干す時に使うザルを繕ったり、日用品の修繕をしたりするときも、明るく道具を広げやすいここがよいのだとか。「散らかってもホウキで掃き出せばいい。掃除も楽です」
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縁側でご飯を食べたり、公園へ行く代わりにここでシャボン玉をしたり、庭に出てバッタを探したり。こんなふうにゆったり過ごして、風が気持ちいいなとか、庭の緑がきれいだなと感じる日常はこれまでありませんでした。
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本当に役立つのは冬から春。日当たりが良い分、部屋の中より暖かいから。
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縁側があるでしょ。だから皆さんよく寄ってくださる。開放感があって気持ちいいから。
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「よく『食べ物が体を作る』というけれど、家や仕事場の環境もそうなんじゃないかしら」。雨の日は、雨が瓦を打つ音、秋は庭の鈴虫の声に耳を澄ます。冬は陽だまりに昼座布団を敷いてゴロリ。縁側でのそんなひとときが「私にとって、栄養みたいになっていると思います」
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縁側は自然光がちょうどよく入って、照明とは見え方が違います。
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そんなに長くないでしょ、子どもと一緒にいられるのは。だからこうやってご飯を食べるのでも、何か一緒にできる場所が家の中にあるって大事なことだよね。
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何かをする場所、何もしない場所。人と、自然と、暮らしとが、つながる場所。様々なものが分断されていく現代にあって、大切な何かをつなぎとめてくれる存在、それが「縁側」なのかもしれない。
選書・文 スロウな本屋 小倉みゆき
『縁側のある家と暮らし』 オンラインショップページ
https://slowbooks.securesite.jp/shop/products/detail.php?product_id=627
スロウな本屋
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