椅子のこと調べてみよう 13 ハンカチーフチェア
2020.11.27
自転車で街へ出かけたとき、ふらりと立ち寄りたい場所の一つが岡山県天神山文化プラザ。
中庭には小さな森があって、鳥の鳴き声がひっきりなしに聞こえてきます。
2017年には天神山文化プラザ特別企画展「天神山迷図」が開催され、美術家・岡部玄さんが中庭に流木のドーム「天神鯰(なまず)」を制作。
こちらに向かって大きな口を開けている鯰は、天神山の地霊を表しているのだそうです。
その中を進んでいくと、子どもの頃に憧れた秘密基地のような空間が広がっています。
街中なのに森があって、大人だけど冒険心くすぐられる天神山文化プラザ。
建物もモダンで、2階ロビーの星空のような天井や吹き抜けのレリーフなど見どころがたくさん。
今回はその天神山文化プラザで見かけた椅子の紹介です。
「ハンカチーフチェア」
ひらひらと舞っているような椅子
1階のホワイエにある真っ赤な椅子。
名前は「ハンカチーフチェア」(1985年)。
その名の通り、ハンカチがひらひらと舞っているような、フリルのような曲線が可愛い椅子です。
アメリカのニューヨークに拠点を構えるノル社より1985年に発売されました。
デザインしたのはイタリアのマッシモ・ヴィネッリ(1931~2014 )。
座面と背板は一体成型。ふわりとした軽やかなフォルム。
中央のくぼみがちょうど体にフィットして、包み込まれるような座り心地です。
スタッキング(積み重ね)できるので、コンパクトに収納できます。
横から見たところ。
この椅子を見かけた日は、朝から雨が降って肌寒く、気持ちも空気も重たい感じがしていましたが、
華やかな赤色と遊び心のあるデザインを見て一気に気持ちが上がりました。
デザインの力
マッシモ・ヴィネッリは1931年、イタリア・ミラノに誕生。
幼いころからデザインに興味を抱き、建築を学ぶためにミラノ工科大学、ヴェネツィア建築大学で学びます。
その後はミラノにデザイン事務所を設立し、1966年にニューヨークにオフィスを開設。
「何かひとつをデザインできるなら、全部できるはず」
彼が残した言葉の通り、手掛けた仕事はパッケージやグラフィック、家具、アメリカン航空など企業のコーポレートデザイン、ニューヨークの地下鉄のサインなど多岐にわたりました。
その中の一つ、1966年にデザインしたステンディグカレンダーは、ニューヨーク近代美術館(MoMA)のパーマネントコレクションに収蔵されています。
50年以上過ぎた今も60年代グラフィックデザインの好例として世界中で愛され続けているそうです。
ステンディグカレンダーは、文字と数字のみのシンプルなデザイン。
とにかくかっこいい!
で、ミーハーな私はポチっとしてしまいました(衝動買い)。
届いたカレンダーは、横122㎝×縦91.5㎝のビッグサイズ。壁にかけると迫力満点!
毎月、「白」と「黒」が入れ替わります。
このビッグなカレンダーとともに歩む2021年。
どうか笑顔多き年になりますように。
文:松田祥子