【寄り道篇】北欧について調べてみました
2021.09.24
椅子のことを調べていく中で知った「北欧デザイン」のこと。
北欧の冬の寒さは厳しく、日照時間も短い。
室内で過ごす時間が長いので、家時間を有意義に楽しめるようにと、
暮らしを彩る優れたデザインのモノが生まれた。北欧では、デザイナーも職人も工員もセールスマンも、
「職業人である前に生活者である」「生活道具の使い手である」という意識が高く、
シンプルで飽きのこない美しい見た目や、長く愛用できる耐久性と高い機能性など、
細部まで神経の行き届いたものづくりが行われている。
フムフム、そんな背景があるのか!と納得。
前回(椅子のこと)、九州と同じくらいの広さ、というデンマークが少し身近に思えてきたけど、
私の中で「北欧」はまだぼんやりとしたイメージ…
というわけで、今回は北欧について調べてみました。
北欧はどんな国がある?
「北欧」とは、ヨーロッパの北部地方。北ヨーロッパのことです。
スカンジナビアと呼ばれるデンマーク・スウェーデン・ノルウェーの3カ国のことをいい、
4カ国になるとフィンランドが加わり、これにアイスランドを含めた5カ国を指すことが多い。
最近はバルト3国(エストニア・ラトビア・リトアニア)を含めた8カ国を北欧としているそうです。
(今回は5カ国について紹介します)
北欧といえば、私の中では“森と湖の国”“ムーミン”のイメージが強かったのですが、
これはフィンランドのことでした。フィンランドの約70%は美しい森で覆われています。
湖が多く、冬には凍った湖を利用して木材の搬出が行われるとか。
デンマークは前回調べた通り、九州くらいの大きさ。
一番高い山が147m!? ほとんどが平らな土地なので、自転車が発達しています。
山がなければ川もないので、飲み水は地下水に頼るのみ。だから土壌汚染はデンマーク人にとって命とりとなるのです。
デンマークの環境問題への先進的な取り組みはこんな背景から。
スウェーデンは日本の1.2倍の広さで、鉄鉱石や石炭などの鉱物資源に恵まれている国。
飛行機(サーブ)や自動車(ボルボ)、カメラ(ハッセルブラッド)などスウェーデン発のメーカー多数あり。
日本では、家具メーカー「IKEA(イケア)」が人気ですね。
ノルウェーの面積は日本と同じくらい。特徴といえば、氷河の侵食作用でできた地形「フィヨルド」。
フィヨルドのある地域では、深い谷間ごとにコミュニティがあり、伝統的なクラフトマン(職人)が多数いたそうです。
アイスランドは、北海道と四国を合わせたくらいの大きさ。
「火と水の島」と言われるように、国土の10%は氷河に覆われながら、200以上の活火山をもつ火山島。
世界で唯一、首都からオーロラを眺めることができる国だそうです。
共通性と独自性
北欧5カ国に共通しているのは、言語、宗教、国旗。
国旗には十字が描かれていて、「ノルディック・クロス」と呼ばれています。
この十字の基になっているのが、世界最古の国旗の一つであるデンマーク国旗。
デンマークは資源に乏しいため、外国に出ていくしかない!というわけで、昔から海運に力を入れていました。
デンマークが北欧最強国としてこの地域を支配していたことが分かります。
ノルウェーの国旗はデンマークに近く、白い十字の上にある青い十字は海を現しているのだとか。
フィンランドの白色は雪、青は湖を、スウェーデンの青は空、金はキリスト教・自由・独立性を表現しています。
北欧ことを調べていく中で、こんな一文に出会いました。
北欧の面白いところは、寒冷な気候という大きな共通点がありながら、それぞれ独自性を保っていること。
類似性と多様性、あるいは共通性と独自性と言ってもいいのですが、そのバランスがいい。
対外的に団結した方がいいときには北欧として団結し、そうでないときにはそれぞれが独立しています。
それは、人間同士のつきあい、社会生活についても同じで、
互いの独自性を尊重しあい、日本のようにちょっと人と違うことをすると冷たい目で見られる、ということがないそうです。自分も無理をしないかわりに、人にも無理強いしない。
その背景には、自然に向き合う姿勢がありました。
北欧のような圧倒的な自然のなかでは、人間がいかに非力であるか、人々はよくわかっているので、
なるべく無理をしないで自然、他者と調和する生き方が身についているのです。
この部分が、私の中に深く刺さりました。
圧倒的な自然…というわけではないけれど、
山陰にある実家(空き家)の山や畑、田んぼの草刈りに帰ると、いつも自然の力に圧倒されます。
年々イノシシが田んぼ(休耕田)に出てくる回数は増えているし、
山から伸びて畑を覆い尽くすクズカズラの凄まじい生命力に驚きます。
この夏は台風と長雨で雑草の生長が著しかった(涙)。
春は一日で終わった草刈りが、今回は2日かけてようやく終わりました。
台風の強風で稲が倒れてしまい、町内の農家さんも稲刈りに苦労していました。
前回うまくいったことが、毎回は通用しない。
人間にとって都合よくはならないということ。
なるべく無理をしないで自然(他者)を受け止めつきあっていく、という姿勢を見習いたいと思ったのでした。
ヒュッゲをもたらすもの
もう一つ、デンマーク語の「Hygge(ヒュッゲ)」という言葉を知りました。
居心地がいい空間や楽しい時間、ほっこりとリラックスできる状態のことで、
デンマーク人が大切にしている時間の過ごし方、心の持ち方を現す言葉だそうです。
北欧では照明器具がヒュッゲをもたらすものの一つとありました。
北欧の街にはまぶしさがない。それほど強い光やキラキラ光りに出会うことはない。
そんな北欧の照明の特徴は、「輝き」というより「陰り」をコントロールしたデザインになっている。
なんだか興味深い北欧の照明!
どんな照明があるのかな。今後調べてみようと思います。
おまけ
ヒュッゲは個人の感覚によるところが大きいけれど、
日常の中に“ヒュッゲ”を意識するだけでも、ちょっとした幸せが感じられそうです。
私が身近で一番に思い浮かんだのは、南部鉄の風鈴でした。
30年前に購入したもの。
風が吹いてチリーンという音が響くと、心の中がスーッと鎮まっていくのです。
この夏もいい働きをしてくれました。
文:松田祥子
【参考文献】
島崎 信、柏木 博、織田憲嗣、米津誠太郎、川上玲子、伊藤大介、新見 隆、山口 淳、土田貴宏(2014)『北欧インテリア・デザイン (太陽レクチャーブック)』平凡社