第2回 3.お店づくり、珍道中

2015.03.16

 

 

――実店舗オープンを決心して、物件探しをはじめたというお話の続きです。

古い民家をリノベーションしたこの空間、昔ながらの風情があって、周囲も静かで、本当にいいところ!!

よくこんな物件を見つけられましたね。

 

そう。

物件探しでお世話になった不動産屋さんが、「ちえのわ不動産」っていうんですけど、すごくおもしろいんですよ!

イベントで知り合ったリサイクルショップの「キミドリ」さんが、行ってみたらって紹介してくれて。

「ちえのわ不動産」ではまず、会ってあれこれ話をして、私がどんな雰囲気がすきでどんな人なのかっていうのを把握してから物件を探してくれるんです。

 

――わ、おもしろい!!

家を建てるときはヒアリングは当たり前ですけど、不動産でそういうのはなかなか聞かないですよね。

 

 

でしょ。

で、こういう本屋をやりたいんですって言って、他にもすきなお店とか、日ごろの暮らし方とか、いろんな話をさせてもらって。

でも、ちょっと街なかのほうがいいという立地の希望があって、それで予算を言ったら「小倉さん、そりゃ無理です~!」って笑われちゃったんですけどね。

ところがすぐ翌月に「見つかりましたよ!」って、この家を。

 

――へえ。

 

でもこの南方(みなみがた:岡山市北区)という場所は、それまで考えに入っていなくて、土地勘もあまりなかったんですよ。

なので一旦考えさせてということで待ってもらって、まずどういうエリアなのかリサーチすることにしました。

仕事の行き帰り、いろんな時間にこの辺りをウロウロ歩き回ってみると、子どもを保育園に送るお母さんとか通勤の人たちとか、意外と人通りがあって生活の匂いが感じられたんですね。ネコがのんびり路地を歩いていたり。

それに、この辺りをよく知る人たちに相談してみると、皆さん「すごくいいと思う」って勧めてくれて。

裁判所の近くだから、知的好奇心の高い方が多いのではという意見も聞いたし、

「ここは昔から人が住んでる場所だから『気の流れ』がいいはず」というある方の話にも「なるほど」と思って、もう1回だけ見せてもらって決めようと思いました。

 

 

――場所の選択は重要ですよね。町の雰囲気がしっくりくるかどうかってすごく大きいと思います。

 

それで再び中を見せてもらったら、自然と「ここにこんなふうに棚を作ったらいいかも」とか、具体的なイメージが浮かんできたんです。

奉還町とか、他の場所の物件も見せていただいたんですけど、唯一ここでは「ひらめいた」感じがあって、心が決まりました。

近所に住む方も気さくでお話好きな方ばかりで、居心地がいいんですよー。

 

――そうなんですね!

でも、今はこうやってきれいになってるから素敵に見えるんですけど、最初はほんとに古~い空き家だったんですよねえ。

 

そうですよ!

2回目見に行ったとき、よかったら長屋の隣に一緒に入居してくれないかなと思って、自営業で、いい物件があれば拠点を移りたいと話していた友人ふたりと一緒に行ったんですけど、

ふたりは「こんなところ無理無理」って早々にNGでしたね。

「このボロボロ状態から小倉さんがどうやってお店にしていくのか見てみたい」って言って、ふたりは大掃除の手伝いにも来てくれました。

 

 

――そんな状態だったんですね。

 

私の中では、最初の大掃除だけちょっと手伝ってもらえばまあなんとかなるだろうという感覚だったんですよ、なぜか。

でも、掃除に入った初日「これは一筋縄ではいかないかも」って、そこで初めて気がつきました(笑)。

「しまった…これはとんでもないことはじめてしまったかも」って(笑)。

 

 

――ああ~!(笑)

小倉さん、あの、失礼ですけど、結構ざっくりと進めてしまう一面もあるんですね(笑)。…なんだか意外な面を見て「可愛い」って思っちゃいました!

 

(笑)。

イベント出店からおつきあいのある「ichi-café」オーナーの戸田さんが、見かねて業務用の掃除機を貸して下さったり、応援に来てくれた友人たちと障子の張り替えなんかを少しずつやったりして。

そのうち、部屋の暗さが気になってきて壁を白ペンキで塗ったらどうかなと思って、「ちえのわ」さんに相談したら、

「それなら、近くにうちが斡旋した物件に住んでる方が、自分でペンキ塗られててすごく上手だったから、やり方教えてもらいに行ってみたら」ということで。

さっそくその家を訪ねたら、「何色に塗るの?白?ならたくさん余ってるから持っていきなさい」って(笑)、教えていただくだけじゃなくてペンキまで頂戴してしまいました(笑)。

 

 

――なんだか「わらしべ長者」みたいな話ですね!

 

それでペンキ塗りをはじめたら、いろんな人が「やってみたい!」って集まってきたんです(笑)。

ご近所の「ネイロ堂。」さんのご紹介で、出石町にある「NPO晴れ間」の皆さんがたくさん来てくれて、ずいぶんいろんな作業をしてくれました。

あと、近所の小学生の男の子が作業の様子を庭からずーっと見てて、そのうちいつの間にかすーっと家の中に上がってて(笑)。

その子が「ねえ、雑巾ある?」って言って、勝手に雑巾掛けしてくれてたりとかね。

 

――へえ!すごいですね!

なんなんでしょうね、知らず知らずのうちになぜか応援したくなる…というか、なんかおもしろくなりそうな匂いが漂ってきて、自分も一枚かみたくなる感じ?

 

いやー、実際私は、内心、どうしようと泣きそうでしたよー。

…この縁側もね、元はビニールの床材が張られてたのを張り替えることにして。

そのときは「絵本の納屋」オーナーの藤本さんという方が、どんな板を買えばいいか教えてくれて、ホームセンターに一緒に行ってくださったんです。

店でカットしてもらって、帰って自分で張ろうとしたら、なんと計算を間違っててサイズが合わないんですよ。

途方に暮れていたら、藤本さんがマツカワさんというお知り合いを連れて来てくれて。

そのマツカワさんが、もうすばらしい救世主だったんです!

電動ノコでワーッと全部カットし直してくれて、ついでに張るのもやってくれて、板が足りなかった部分は別の板を買ってきて継ぎ目の部分もキレイに加工してくれて…。

すごい方が来てくれたんで甘えに甘えて(笑)、いろいろ手伝ってもらいました。

 

 

――またここでも、救いの手が現れるんですね~。

 

でね、ホームセンターのおじさんが板をカットしてくれるときに、「人間のすることだから完璧にまっすぐにはならないよ」って言ってて。

「そうかあ」と思ってね。ちょっとその言葉が心に残りました。

 

――ちょっとゆがんでて、隙のあるところに、ほっと心が緩むんでしょうね。

レジのカウンター棚も手づくり感があふれてて、いい味出してます。

 

この棚は、毎週のように手伝いに通ってくれた、友人で絵本講師の秋山さんちの小学生のお子さんたちにも釘を打ってもらったんですよ。

「やる?」って聞いたら、もう大喜びでトントンやってくれました。

絵本を入れてる本箱は、これまた知り合いのおつれあいの方が「DIYが大好きなんだけど、家ではあまりいい顔されないから」って(笑)、ぜーんぶ作ってくださいました。

 

 

――へえ~!ほんとにいろんな人の力の結集なんですね!

こんなに次々手伝ってくれる人が集まってくるって、すごくないですか?
なにか小倉さんに、自然に周りを引き寄せる「気」みたいなのがあるのかも…?!

私も今、不思議な居心地よさを感じて、いつまでもここにいたいという感じがしてるんです。

 

私だって、今までの人生で、こんな短期間にこんなにいろんなたくさんの人が自分の家に集まってきて下さったことなんてないですよ!

ここに来てから不思議なことばかり。

自分でも本当にびっくりしてます。

 

つづく ・・・4回連載 最終回「 4.本からはじまるなにか」は3月23日UP予定です。

2014年11月 取材
文:吉田愛紀子
キャプション:編集A

※ 写真をクリックorタップするとキャプションとともに拡大写真がご覧いただけます。

 

※「スロウな本屋」は、2015年4月3日よりオープンします。

 

スロウな本屋

「ゆっくりを愉しむ」をテーマに、店主がセレクトした本を扱う小さな本屋。
OPEN 11:00~19:00
定休日 火曜日 ( 2015年 4月中は、金・土・日・月曜のみ営業 )
岡山市北区南方2-9-7 tel.086-207-2182

スロウな本屋WEBサイト http://slowbooks.jp/

http://slowbooks.exblog.jp/

 

← 2.本屋のお仕事  |  4.本からはじまるなにか →

ieto.me ホームへ

 

 

ピックアップ記事

関連記事一覧