第8回 2.水と庭と猫たちと
2016.10.17
〈お話を伺っている間に尚美さんがお菓子とお水を準備してくださっていました。実は尚正さん、大のお水好きなのだとか。おすすめの水をわざわざ準備してくださったようです〉
尚正さん:移動スーパー「とくし丸」でまわっている間倉という地区があるんです。今、そこの水にはまっているんです。今日はぜひ飲んでいただきたいと思って。どうぞ。
――:わー、ありがとうございます。 まろやかな感じ。臭みがないです。
尚正さん:もうちょっと冷えるとね、シャキッとするんですよ。冷やして飲むまでは特別な感じはしなかったんだけど、冷やして飲んだとき、これはちょっと違うなぁとすっかりはまってしまいました。
販売中も水をペットボトルに入れて冷蔵庫の吹き出し口のところに入れておいたら、ちょうどいい感じに凍って氷が浮かぶんですよ。
ロックアイスみたいに。
暑い車の中であれを飲みながら販売するんです。
――:至福のひとときですね。
尚正さん:自分で釣った魚が最高においしいのと同じで、自分で汲んだミネラルウォーターは本当に最高ですよ。
もう一つ、よく飲んでいる水があるんですけど、南阿蘇の「寿鶴」という水で、ぬるい方がおいしいんです。温泉からとれる水らしいんですけど、天然ビフォアクロレラが入っているとかで、なんだかミルクを飲んでいるような感じがするんです。
――:冷えている方がおいしいとか、ぬるめの方がおいしいとか、水もいろいろあるんですね。
「間倉の水」は販売中に見つけたんですか?
尚正さん:はい。販売時の駐車スペースの脇に「里山の天然水」という看板があったんです。その横には水道の蛇口と募金箱があって。
お客様のおばあちゃんに尋ねてみると、岩盤層を突き抜けるところまで井戸を掘ったらすごく良い水が出たらしいです。
ここは『天空の間倉』(安田さん命名)のふもとに当たる場所なんですが、ここに来たときはいつも「お水、今日ももらいますよー」と言ってもらっています。
――:『天空の間倉』というネーミング、面白い(笑)。いいところなんでしょうね。
尚正さん:月曜の朝に行く、山の頂上付近にある集落なんですが、180度近いパノラマビューで、瀬戸内海まで見渡せるんです。冬場のもう少し早い時間だと、雲海も出るそうです。岡山市街とは温度が5度くらい違うと言ってましたね。
尚正さん:間倉のふもとにある桃園エリアも僕の中での美スポット。春にはコブシと桜が楽しめて、川岸にはクレソンが生えてるんですよ。水もあきらかにきれいなのが分かります。
――:別世界ですね。
尚正さん:月曜の朝からというところが最高です。爽快ですよ。
〈岡山市内にそんな素敵なところがあったなんて! まるで旅行の土産話を聞いているような錯覚に陥ってしまいました。訪問先の詳しい状況は安田さんが更新しているブログ「とくし丸日記」に綴られています〉
――:それにしても、お庭の緑を見ているとゆったりと気分が落ち着いてきます。この家はずいぶん古いですよね。
尚正さん:築95年ぐらいになるそうです。
造りが面白いでしょ。もともとは隣の家と一体だったらしいんです。
コの字型の廊下の先にある離れの部屋は昔茶室だったそうで、くぐり戸もあったみたいです。ほら、あそこの石には獅子脅しを挿す穴もあるでしょ。
12年前に越してきたんですが、以前住んでいた方は庭を放置されていたので、はじめは草が腰丈くらいまであったようです。
妻や義理の母が草を刈っていったら、遺跡を発掘するように次から次へと庭石が出て(笑)、草を切っていったら灯篭が出てきた!という感じで。
――:笑。 今の状態からは想像できません。
尚正さん:手入れすれば相当いい庭になるだろうと思って、ちょっとずつきれいにしていきました。
最初は僕の父と親戚のおじさんが庭木を切るのがうまいので、刈ってもらいました。それからは伸びたらマメに切る、を繰り返し、形を整えながら、ひたすら維持していったら今の庭になったんです。
――:手入れを怠ると、草が生えてきますか?
尚正さん:草は強いですからね、油断したらすぐに生えてきます。特に春先から梅雨明けまでは気が抜けません。週1回は必ず手入れするようにしていますね。
――:剪定は電動ですか?
尚正さん:いえ、剪定ばさみですね。こまめにやっている分には、ピンピン出てきたものを切るという感じで。
――:お庭の勉強をされていたことがあるんでしょうか?
尚正さん:全然ないです。本当にマメに手入れをしていただけで。
尚美さん:庭師さんが「うまく剪定されていますね。下手なプロよりはうまいと思います」とほめてくださったんですが、よくよく見ると、葉を切らずに枝を切るようにしているらしいです。
――:当初の庭から新たに植えた木は?
尚正さん:僕は基本的に植えるのは拒否していたんですよ(笑)。もう完成されている庭だと思ったので。でも、妻がたまに持ってきて、「これを植えろ」と。
尚美さん:勝手に植えたら怒られるからね。
――:笑。
尚正さん:左の手前にあるこでまりは、義理の妹のお母さんが家に生えていたのをよかったらと持ってきてくれたものなんです。あとは山吹、紅葉2本。紫陽花も植えました。植えたらそれなりにおさまった、という感じですね。
――:秋になったら紅葉が色づいてきれいでしょうね。
尚正さん:そうですね。やっぱり季節感が出るものがあった方がお店にも変化が生まれていいです。
――:そういえば、ブログにも紹介されていた猫の「ゆず」と「みかん」。
「とくし丸」のお客様からいただいたユズとミカンと一緒に写真に写っていましたね。
尚正さん:はい。親バカながら、あまりにかわいい猫ちゃん達なので、なんとか写真を載せる手はないものかと常々思っていたんですが、「とくし丸」の日記なので唐突には出せないなと。
そんな矢先にお客様から奇跡的にお裾分けをいただいたんです。
最初にミカン、数日後にユズ。
とどめに同じ日にユズとミカン。
思わずガッツポーズでした。
尚美さん:ミカンをぶら下げたりして、すごくこだわって写真を撮ってましたよ(笑)。
2匹とも連れてきましょうか?
――:いいんですか? ぜひお目にかかりたいです。
〈お二人で「どっちがどっちをつかまえる?」と相談しながら、2階から「ゆず」と「みかん」を連れてきてくださいました〉
尚正さん:ゆずは愛嬌満点で人懐こいんです。みかんは、もしかして逃げようとしている?
ちょっと人見知りなんです。
尚美さん:2匹はきょうだいなんですよ。今2歳ちょうどで、人間にしたら23歳くらいかな。
お付き合いのある作家さんのところに通ってきた猫ちゃんがいて、あるとき子猫を6匹連れてきたらしく、里親を探していたんです。
尚正さん:ほらほら、みかん、こっち向いて。
〈「ゆず」と「みかん」をやさしく見守るお二人の姿がこれまた微笑ましく、しばらくほっこりとした撮影タイムが続きました。
そして、尚正さんがシステムエンジニアから、移動スーパー「とくし丸」開業へ方向転換したプロセスへ、会話はゆったりと流れてゆきます。〉
つづく・・・4回連載 第3回「3.余分なものが取れました」は10月24日UP予定です。
2016年8月 取材
文:松田祥子
キャプション:編集A
※ 写真をクリックorタップするとキャプションとともに拡大写真がご覧いただけます。
◆ 安田さんのブログ 「とくし丸日記」
~安田さん独特のスパイスを効かせた親近感が魅力です。
http://yukuriotto.blog.fc2.com/
◆ 移動スーパーとくし丸 webサイト
http://www.tokushimaru.jp/
◆ 天満屋ストアとくし丸 webサイト
http://www.tenmaya-store.co.jp/tokushimaru/
◆ ゆくり http://www.yukuri-utsuwa.net/
岡山市北区撫川173-1/TEL 086-292-5882
営業時間 木・金・日曜11:00~16:00
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