第6回 2.絵本のワークショップ
2016.04.11
【 秋山さんは昨年から、『スロウな本屋』(岡山市北区南方)で毎月「絵本で子育てワークショップ」を行なっています。 『スロウな本屋』の小倉みゆきさんとの出会いは約7年前。絵本を読んだ後、その続きを想像して描いていた秋山さんとお子さんたちが、奇しくも似た内容のイベントを行なっていた小倉さんに話しかけ、意気投合したそうです。 】
『スロウな本屋』 http://slowbooks.jp
秋山さん:さっきパン屋さんに行ってね、それはデニッシュが目当てだったんですけど、行ったらなかったの。かわりにマシュマロが2個載っているデニッシュがあって、マシュマロかーと思って、そのあと、ドーナツがあったので、あ、これなら作れる!と思って。子どものおやつみたいなんですけど、お豆腐とホットケーキの粉をくちゅくちゅっと混ぜて、
——:いただきます! 軽い。おいしいい…
秋山さん:皆さんが来られたとき揚げてて。ギリギリになるのがいけない。
——:私たちが早く着いちゃったから。結構、おやつを作ってあげるんですか?
秋山さん:幼稚園まではお菓子は買わない、って決めて作っていたんですが、でも、主人のお母さんが買ってくれて、それがなくなったら作ることにして、で、一度自分で買うとだめですね、ラクなほうに行っちゃう。だから最近、あまり作らなくなって。
——:でもやっぱり味がね。こういう素朴な優しい味はないから。
——:わらべうたについてもお話うかがいたいんです。「絵本で子育てワークショップ」では、絵本をたのしむコツを「わらべうた」を交えながら伝授するそうですね。
秋山さん:わらべうたは私も子どもが赤ちゃんのときは全く知らなくて、一度、手遊びのうたを教えてもらってやってみると、喜ぶからすごく面白くて。でも歌詞も曲調も覚えていなかったから、自分で作り直したりして歌っていたんです。
幼稚園に入ったときに、園がわらべうたに力を入れていて、遊びながらうたを交えるんですが、そのうたも意味のわからないうたがいっぱいあるんです。だけどおもしろい、意味が分からないからこそ面白い。
——:たとえば…。
秋山さん:最初に驚いたのは、「おてぶしてぶし」なんです。ご存知ですか?
子どもに握ったこぶしを出して「どっちだ?」ってやるでしょう。「おてぶしてぶし てぶしのなかに へーびのなまやけ カエルのさしみ いっちょばこやるから まるめておくれ いーや」という歌なんです。
それで、〈ヘビの生焼け? カエルの刺身?ってぇ…?〉と思っていたんですが、子どもって〈わらべうたって、何を言ってるんだろう?〉と、不思議な言葉だから自然に聞いてしまうところが魅力のようで、そこから口が動いて、うたを歌うから、〈何を歌ってるの?〉とお母さんの表情をじっと見る、というところで、話を聞くことにも繋がっていく、らしいです。
——:ほう! 理解力というか…
秋山さん:最初はそんなことを聞かずに、「わらべうたをお家でもやってくださいね」と言われていたんですが、わらべうたの本を読んでみたら、そういう要素があるということを知ったんです。
——:園ではそこまでは言わないんですか。すごい!
秋山さん:だからテンポの速い歌より、リズムが一定の、不思議な日本語を伝えると、赤ちゃんでも「ん?」ってなります。赤ちゃんは何を語っても、お母さんお父さんの表情を見ると思うんですが、そこに歌をつけてあげるといっそう良いと思います。
よく教えてあげているのは、足の指をさわりながら、わらべうたを歌ってあげるんです。
すると赤ちゃんは〈何を言ってるの?〉という感じでこっちを見て、泣いていてもお母さんが、足の指をマッサージしながら、「ちっちゃいまーめこーろころ」って歌うと泣き止んで、ほげ? って見るんです。だから、わらべうた、すごい!って(笑)。
ただ、それを教えてもらったとき、うちの子どもたちはもう、小学2年、3年になっていたんです。でもね、やってみたら、喜ぶの! それで何歳でもいいんだってわかりました。眠る前に、疲れていたのかな?わからないんですが、「お母さん、『ちっちゃいまめ』やって」って言うんです。
あ、これを言ったら、怒られるかもしれない(笑)。
——:あはは。でもこの「ちっちゃいまめ」は感覚が伴うのが良いんでしょうね。
秋山さん:くすぐったいらいしいんですけど、私の声が優しくなるんだと思います。歌だから優しく歌えるでしょう。
——:甘えられる時間ですね。
秋山さん:「やって」って言われたら何歳でも…。でももうちょっとで終わるんじゃないかなと思うから余計にね。
——:じゃあワークショップでは、お子さんとお母さんにそういったこともやってもらうんですね。ほかにはどういうことをするんですか。
秋山さん:いちばん最初に、本を読む前にやっているわらべうたがあって…。
〈と、隣の部屋から、何やらタオル地のついた棒を取って来て、見せてくださいます〉
まずこうやって持ったら、子どもたちは「何なに?」という顔になるので、「行くよー」と言って、「かっくん かっくん かくれんぼ ちゃーわーんに おーたーふーく すっぺらぽー」。
それで「何が出て来た? 何が見えた?」と聞くんですね。すると、もう子どもたちはこのかっくんうさぎ、取り合いっこになります。
〈歌のような言葉に合わせて、棒を引っ張ったり、押し込んだりを繰り返して、最後の秋山さんの「すっぺらぽー」に合わせてうさぎが飛び出してきます。かなりのインパクトです。秋山さん、盛り上げ上手!〉
——:その「かっくん」の人形は、手袋で作っているんですか?
秋山さん:何に見えます? びっくりするかも!
——:五本指くつ下?
秋山さん:正解は…、便座シートです。
——:うわー! 見本はあるんですか?
秋山さん:これも、幼稚園の先生がやっていて、作り方を教えてもらったんです。子どもが通った幼稚園がすごく良かったんですよね。そこから家でもやってみたいと、真似して取り入れて今に至る、という感じです(笑)。
——:前向きなお母さんですよね(笑)。
秋山さん:本当に、子どもと何をして遊んでいいのかまったくわからなくて、私は子どもが苦手だったから。
——:え。そんなふうには。
秋山さん:小さい子どもが来ても、どうやって遊べばいいんだろう、って思っていたんです。
——:妹さんがいたのに?
秋山さん:妹を連れて遊ぶのがいやだったんです。自分の友だちと遊びたいのに。
——:あー、お兄さんお姉さんにありがちな(笑)。
秋山さん:そうなんです。だから幼稚園に入ってからは、ヒントをたくさん幼稚園からもらって、その前は絵本からもらっていました。
——:この「かっくん」は幼稚園のときにやってあげていたんですか?
秋山さん:幼稚園でもやっているんですが、家でもやって(笑)。
——:あ。これ、中に入っているのはペットボトル?
秋山さん:そうです。それと菜箸と。幼稚園の先生はもっと可愛らしく作っていたんですが、私はこれ以上出来ない…。しかも縞模様。
——:それは名前が付いていますか。
秋山さん:たぶん、「かっくん人形」だと思います。
——:カタカナかな?
秋山さん:ひらがなだったと思います。私はうさぎだけど、人形を作ってる方がいらっしゃって、この作り方を教えてくれた先生は翌年、お人形さんにしていたんです。
それを知らずに幼稚園のお母さんと子どもたちの前でやったら、人形じゃなくてウサギが出て来たから、「えーーー! 人形じゃない」って。「え、先生は今、何でされてるの」と聞いたら、「今はお人形なんよ」って教えてもらって。わー進化しちゃった と思って。
——:動きにキレがあって良いですよね。ハイスペックな感じ。何度もやっているはずなのに、くたびれていなくて。
秋山さん:結構、乱暴に扱っても大丈夫です。
——:じゃあこれをワークショップの最初でやって。全体で1時間半くらいですか?
秋山さん:一応1時間くらいです。30分間は私が本を読んで、お母さんには子どもたちの反応を見てもらうんです。聞けないと子どもたちは部屋から出て行くんですけど、このとき実は、お母さんに向けても読んでいるんです。
お母さんは普段、聞くことがないでしょう。でも本を選ぶときは、読んで選ぶことが多いと思うので、そうします。それから向こうに行って遊んでいる子どもたちも、「こっちの話も聞いているから大丈夫」って言って。それから、わらべうたで遊んで、残りの30分はテーマとして決めたことを話したり、おしゃべりを聞いたり。で、1時間半になっちゃったりします。
——:お話はお子さんも一緒ですか?
秋山さん:子どもたちは、お話になるとバタバタと逃げて行っちゃうんです。だから『スロウな本屋』さんの場合は、店主の小倉さんに面倒を見ていただいて(笑)。
——:秋山さん、いろんなところから引っ張りだこになりそう。
秋山さん:なったらいいんですけどね〜(笑)。
絵本は結局、親と子のコミュニケーションの道具のひとつだけなのに、「頭が良くなりますか?」とか、「言葉を覚えるために」というスタンスで読んでいたとしたら、結果はいつになったら出るのかな、というところになってしまう。
そしたら、子どもにとって楽しい時間じゃなくなるでしょ。だから、絵本を子どもに読むってことは、そこじゃないんだよって、伝えられたらなぁ。
——:親子向けはもちろんですが、ほかの世代の方に向けても、こういうワークショップがあればいいなと思うんですよね。
秋山さん:去年、『晴れ間』(岡山市北区出石町http://harema.jimdo.com/)さんで、好きな絵本を持ち寄って紹介しあうワークショップがあったんですね。
たくさんの若い人たちが集まっていて、嬉しくなりました。まずは大人が絵本や本が好きじゃないとね、子どもに伝えられないでしょ。
で、そこで出会った20歳代の女の子の話なんですけど。気分が沈んでいたとき、本屋さんで絵本の紹介の本を見つけたそうなんです。それで、「ああ、懐かしい。そういえばお母さんに読んでもらったな」っていう感情とともに嫌な事を全部忘れて、頑張ろうと思えた、っていうお話をしてくれたんです。
それを聞いて、子どもに絵本を読むことが、結果そんなふうに何かの糧になればいいなと思いました。私は時間がたっぷりあったから子どもに読んでいただけなんですけど(笑)。
つづく・・・4回連載 第3回「3.暮らしぶりを教えて」は4月18日UP予定です。
2016年2月 取材
文:尾原千明
キャプション:編集A
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秋山さんは、岡山市を中心に『絵本で子育てワークショップ』を開催されています。
詳細は、ブログやフェイスブックをご覧ください。
◆「えほんのカタチ」 http://akehon.exblog.jp/
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